| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-026  (Poster presentation)

2010年~2016年に生じた海洋熱波が北海道南東部の岩礁潮間帯生物群集に与えた影響【A】【B】
The impact of marine heatwaves during 2010–2016 on rocky intertidal communities in the southeast Hokkaido【A】【B】

*石田拳(北大・院・環境), 和田葉子(北海道大学), 立花道草(北大・院・環境), 藤井玲於奈(北大・院・環境), 姚遠(北大・院・環境), 廬安華(北大・院・環境), 新井慧(北大・院・環境), 稲冨楽(北大・院・環境), 今村彩音(北大・院・環境), 久保田畔菜(北大・院・環境), 小川日咲乃(北大・院・環境), 佐藤洸紀(北大・院・環境), 野田隆史(北海道大学)
*Ken ISHIDA(GSES,Hokkaido Univ.), Yoko WADA(Hokkaido Univ.), Michikusa TACHIBANA(GSES,Hokkaido Univ.), Reona FUJII(GSES,Hokkaido Univ.), En YAO(GSES,Hokkaido Univ.), Anhua LU(GSES,Hokkaido Univ.), Satoi ARAI(GSES,Hokkaido Univ.), Raku INATOMI(GSES,Hokkaido Univ.), Ayane IMAMURA(GSES,Hokkaido Univ.), Hanna KUBOTA(GSES,Hokkaido Univ.), Hisano OGAWA(GSES,Hokkaido Univ.), Hiroki SATO(GSES,Hokkaido Univ.), Takashi NODA(Hokkaido Univ.)

 近年、海洋熱波の発生頻度・期間が増加しているため、熱波に対する海洋生物の応答を理解することは急務である。しかし、海洋熱波が生物のアバンダンスに与える影響を評価した先行研究の大部分では、熱波以外の環境の確率的な影響が排除されてこなかったという問題がある。また、海洋熱波はしばしば短期間で繰り返し発生するにも関わらず、熱波が生物に与えるaccumulative carryover effect(熱波の発生から経過年数に応じてアバンダンスが継続的に増加または減少すること)はこれまで評価されたことはない。
 そこで、本研究では、2010~2016年夏に北海道南東部で発生した海洋熱波に対する岩礁潮間帯生物群集の応答を15年間の調査データを用いて熱波以外の環境変動の影響を分離し、(1)岩礁潮間帯群集の機能群(大型藻類、固着性無脊椎動物、植食性軟体動物、肉食性無脊椎動物)の群集アバンダンスと各生物種のアバンダンスにおいて海洋熱波のaccumulative carryover effectが検出されるか?(2)海洋熱波に対する応答とその後の回復は機能群の群集アバンダンス間で異なるか?(3)種ニッチ(温度・垂直ニッチ)によって、海洋熱波への感受性は異なるか? の3点について評価した。
 その結果、(1)群集アバンダンスと各種のアバンダンスのどちらにも海洋熱波のaccumulative carryover effectが生じたことが明らかになった。 また、(2)海洋熱波発生中および発生後2年目までの期間、群集アバンダンスは大型藻類では増加したのに対し、植食性軟体動物では減少していた。また、(3)海洋熱波発生中と発生後に、冷水性の種のアバンダンスが減少し、 暖水性の種のアバンダンスが増加した。一方、種間の海洋熱波に対する応答に垂直ニッチに依存した明白な違いは見られなかった。


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