| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-034  (Poster presentation)

タヌキとアカギツネの種間関係:夏季の人工餌場における行動の評価【A】
Interspecific interaction between raccoon dogs and red foxes: behavioral analysis at artificial feeding sites in summer【A】

*高崎日向子, 斎藤昌幸(山形大学)
*Hinako TAKASAKI, Masayuki SAITO(Yamagata Univ.)

競争は群集構造の形成に関与するため、そのメカニズムの解明は群集動態や進化の理解、生態系保全において重要である。特に食肉目では、殺しやギルド内捕食など、特徴的な干渉競争が見られ、体サイズや戦闘力、モチベーションなどによって優劣が決まることが指摘されている。競争関係にある種間では、どのような対競争者行動によってリスクを回避するのか明らかにすることは重要である。このとき、在来種間では共存の歴史が長いため他種を競争相手として認識できるが、在来種・外来種間では共存の歴史が短いため他種を認識できない可能性がある。本研究は、在来種であるタヌキ、アカギツネと、外来種であるハクビシンを対象とし、中型食肉目の種間関係を明らかにすることを目的とした。
2022年夏季に、庄内地方の林道付近に91地点の人工餌場を約10日間設置し、訪問する動物を自動撮影カメラで動画撮影した。全ての種の組み合わせで干渉競争における勝敗を記録した。また各動物種の撮影時刻から日周活動を推定し、種間で重複度を算出した。さらに3種間の組み合わせにおいて、撮影時刻から出現時間差を算出し、前後関係を考慮して比較した。
日周活動の重複度からは、種間での活動時間の分割は見られなかった。干渉競争ではタヌキ、キツネ、ハクビシンの順に優位であったが、出現時間差の解析ではタヌキはキツネとの遭遇を回避していた。タヌキは夏季に採餌量が増加するためモチベーションが優位性をもたらした一方で、遭遇回避においては、よりハンティング能力の高いキツネがタヌキより優位であることが示された。この結果は状況に応じて優劣関係が異なることを示唆する。また、ハクビシンは在来種2種との遭遇を回避している様子が検出されなかったことから、他種を競争相手として認識できていない可能性がある。本発表ではさらに解析を進め、タヌキとキツネにハクビシンを加えた3種間の関係性について議論したい。


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