| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-035  (Poster presentation)

東北地方の多雪環境における中型食肉目の競争関係【A】
Interspecific competition among three medium-sized carnivores in a heavy snowfall area in north-eastern Japan【A】

*渡邉和真, 斎藤昌幸(山形大学)
*Kazuma WATANABE, Masayuki U SAITO(Yamagata Univ.)

同所的に生息する食肉目では、種間で干渉競争が生じることが知られており、劣勢種は行動を改変することがある。そのため、種間の干渉競争における優劣を明らかにすることは食肉目群集を理解する上で重要である。冬季の多雪環境では、餌資源の減少や積雪による採餌の制限に起因する干渉競争の増加が予想されるが、干渉競争に関する知見は少ない。本研究では東北地方の多雪環境に同所的に生息するアカギツネ、タヌキ、ニホンテンの3種を対象に、その優劣関係を明らかにすることを目的とした。
積雪が見られる2022年1月から4月に、山形大学上名川演習林の林道沿いの7地点にベイトとカメラトラップを設置した。撮影された動画から、種、訪問時刻、滞在時間、直接競争を記録した。優勢種の回避に起因する劣勢種の訪問時間帯の変化は、カーネル密度推定と昼夜の出現割合の種間比較によって解析した。種の優劣に起因する資源の占有度合いを示す滞在時間は、ベイトにおける滞在時間の種間比較によって解析した。優勢種の回避に起因する劣勢種の時間的な回避は、前後関係を考慮した異種との出現時間差によって解析した。直接競争での優劣は、異種同士が直接出会った際の勝敗を調べた。
訪問時間帯の解析では、カーネル密度推定は種間の優劣は検出されなかったが、降雪期でのテンの日中の出現割合は他2種よりも高かった。滞在時間の解析では、キツネ、タヌキ、テンの順で滞在時間が長かった。出現時間差の解析では、異種間に有意な出現時間差は検出されなかった。直接競争の結果では、キツネとタヌキの間では優劣が見られず、タヌキがテンよりも優勢であることが示唆された。これらの結果から、冬季の積雪環境における中型食肉目は体重に基づく優劣関係(すなわち、キツネ≧タヌキ>テン)を示す一方で、採餌へのモチベーションや資源量、種の越冬戦略といった冬季の環境条件に関係する影響も受けていることが示唆された。


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