| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-053  (Poster presentation)

特定外来生物ソウシチョウの捕食者の種類に応じた行動の特徴づけ【A】
Behavioral characteristics of invasive Red-billed Leiothrix according to predator species【A】

*森藤泰紀, 早坂大亮(近大・農)
*Hiroki MORIFUJI, Daisuke HAYASAKA(kindai Univ.)

外来種の侵入成功のカギのひとつに,在来捕食者に対する捕食回避能力が挙げられる.在来捕食者による捕食に対して,外来種が適応的な行動を示せるなら,侵入成功の確率は高まるだろう.これまで様々な動物で,音声や動作を交えて捕食者に対抗する行動が観察されており,そのひとつであるモビングは,通常,捕食者を追い払うために用いられ,鳥類で広く観察されている.捕食者の種類に応じてモビングを変化させる種も複数報告されており,捕食者に対する適応的な行動であると考えられている.これらを考慮すると,外来種におけるモビングの実態は,外来種が在来捕食者に対して適応的な行動を示すかどうかをはかる上での有用な指標となる.わが国の特定外来生物に指定されているソウシチョウLeiothrix lutea Scopoliは,侵入各地で急速に分布を拡大させており,現在,日本で最も広域に分布している外来鳥類である.外来種の侵入成功に,捕食者に対する適応的行動が重要で,かつ鳥類で多数のモビング事例が報告されていることを考慮すると,広域に侵入している本種は,様々な捕食者に対して多様な適応的行動を示す可能性は否定できない.本種における対捕食者行動の実態を明らかにすることで,外来生物の侵入成功のより良い理解につながるだろう.そこで本研究では,異なる種類の捕食者(フクロウ(成鳥に対する捕食者),ネズミ・ヘビ(巣捕食者))に遭遇した際の,繁殖期におけるソウシチョウ行動について,特にモビングに着目して調査した.調査の結果,フクロウとネズミの模型に対して,高頻度でモビングが観察された(フクロウ:7/8,ネズミ:6/10).モビングの時間は,有意ではないもののネズミ処理で短い傾向にあった.モビングの距離はネズミで有意に近かった.モビングの際に発した音声を捕食者間で比較したところ,捕食者種ごとに異なる音声を発していた.引き続きヘビ処理を実施し,異なる脅威に対する本種の行動を評価していく.


日本生態学会