| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-060  (Poster presentation)

バイオロギングで見るキクガシラコウモリの採餌行動生態~採餌戦略の解明に向けて~【A】【発表取消/Cancelled】
Foraging Behavioral Ecology of rhinolophus ferrumequinum nippon as Seen by Biologging: Toward the Elucidation of Foraging Strategies【A】【発表取消/Cancelled】

*野見亮人(同志社大学)
*Akito NOMI(Doshisha Univ.)

コウモリは、周囲状況や目的に応じてエコーロケーションに用いる超音波音声を様々に変化させる。夜間に活動するコウモリの野外環境下で行動生態の調査には、音響情報が有用な指標となる。そこで本研究ではコウモリの一晩当たりの採餌回数、採餌場所の推定を目的とし、バイオロギングにおけるGPSロガーに加え、音響情報も同時に記録できる音響GPSロガーを併用することで、彼らの移動軌跡・採餌行動の記録を試みた。
対象種は福井県大野市に生息するキクガシラコウモリ(Rhinolophus nippon)で、蛾を主食とする昆虫食であり、洞窟や廃トンネルにコロニーを形成する。餌を捕食する際、超音波放射間隔(以下、IPI(Inter Pulse Interval))が短くなるため,音響データから餌場を推定することができる。
実験は2017年から2022年の5、6、9、10月に行い、合計19個体からデータの回収を行った。GPSロガーでは12個体から28日間のデータを回収し、そのうち11個体が捕獲を行ったねぐらから半径3 km以内の範囲で活動していることが確認された。また、連続してデータを回収することができた各個体において、毎晩特定の場所での集中的な測位 が確認された。また、音響GPSロガーでは、6月に2個体、9-10月に6個体から回収されたデータから,採餌時のIPIパターンが確認され,このようなパターンが 記録時間の短いデータ内に、集中して記録される ことが分かった。これらの結果から、キクガシラコウモリは個体それぞれが特定の餌場内で連続して採餌行動を行っている可能性が示唆された。以上の結果から、音響GPSロガーはコウモリの採餌活動を記録・推定する有効な手段であり、今後データ数を増やすことで、コウモリが持つ音響情報を用いた高度な採餌戦略の解明につながると期待される。


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