| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-062  (Poster presentation)

カブトムシにおいて採餌効率が活動時間に与える影響【A】
Effects of foraging efficiency on daily activity patterns in rhinoceros beetle【A】

*神田旭(高知大学), 柴田亮(杉戸町立広島中学校), 小島渉(山口大学)
*Asahi KANDA(Kochi Univ.), Ryo SHIBATA(Hiroshima J.H.S), Wataru KOJIMA(Yamaguchi Univ.)

採餌は生物の生存に欠かせないものだが、餌の獲得量は環境によって大きく異なる。一般的に、餌が不足した環境では採餌効率が悪くなり、飢えのリスクが高まる。そのため、そのような環境では生物の活動時間は長くなる可能性がある。本研究では、カブトムシを対象に、採餌効率が活動パターンに与える影響を明らかにするため、3種類のホスト樹種(クヌギ、シマサルスベリ、シマトネリコ)における、カブトムシの活動時間と採餌効率を調査した。まず、株についているカブトムシの数をかぞえ、1日における個体数変動を調査した。つぎに、空腹状態にしたカブトムシを各樹種に放し、採餌をはじめてから1時間の体重増加量を測定し、採餌効率の指標とした。その結果、クヌギとシマサルスベリでは、20時ごろからカブトムシの数が増え始め、24時ごろ最大になり、5時には多くの個体がいなくなった。シマトネリコでも夜間に個体数が増加したが、5時から18時の間にもピーク時に比べて半数近くの個体が見られた。1時間あたりの体重増加量は、クヌギとシマサルスベリで約0.1gから0.3gであったが、シマトネリコでは約0gであった。以上の研究から、カブトムシの活動パターンや採餌効率は、ホスト樹種によって異なることが明らかになった。特に、シマトネリコでは、採餌効率が低く、カブトムシの空腹状態が続くため、多くの個体が昼間まで採餌を続けた可能性が高い。樹種間での採餌効率の違いは、樹液の滲出速度の違いを反映しているかもしれない。本研究から、飢餓状態では生物の活動時間が長くなることが示唆された。


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