| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-071  (Poster presentation)

社会寄生性ハネカクシはシロアリ巣内で女王に随伴する【A】【B】【E】
Social parasitic rove beetles aggregate around queens in termite nests.【A】【B】【E】

*中園大博, 矢部清隆, 野呂拓哉, 高田守, 松浦健二(京都大学)
*Tomohiro NAKAZONO, Kiyotaka YABE, Takuya NORO, Mamoru TAKATA, Kenji MATSUURA(Kyoto Univ.)

社会性昆虫の生活は血縁者からなるコロニーメンバーの利他行動によって成り立っている。シロアリの巣内には、その利他行動に便乗して生活する様々な社会寄生性の生物が存在する。巣内には餌場や王室、育室などがあり、場所によって行われる社会行動の種類や頻度も大きく異なる。本研究において、我々は社会寄生性シロアリハネカクシ(以下ハネカクシ)が女王に随伴することで、ホストのシロアリからグルーミングなどの利他行動を受けやすい巣内分布をとっていることを見出した。まず、野外のシロアリ巣内におけるハネカクシの分布を調査したところ、ハネカクシがシロアリの王室に集中することを突き止めた。次に、室内実験により、ハネカクシが女王のいる場所に誘引されることを明らかにした。さらに、スキャンサンプリングによるシロアリ巣内での行動観察を行い、ハネカクシが王室内にいる時に、他の場所にいる時よりも高頻度でシロアリからグルーミングを受けることを突き止めた。また、シロアリからハネカクシへの給餌行動は、王室においてのみ観察された。これらの結果は、複雑な構造をもつシロアリの巣内において、ハネカクシが女王に随伴することによってグルーミングや給餌頻度の高い場所に確実に定位し、より利他行動の恩恵を受けやすくなっていることを示唆する。


日本生態学会