| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-075  (Poster presentation)

アデリーペンギンの採餌トリップにみられる集団的行動【A】
Collective movement of Adélie penguins in foraging trips【A】

*今木俊貴(総合研究大学院大学), 國分亙彦(総合研究大学院大学, 国立極地研究所), 塩見こずえ(東北大学), 高橋晃周(総合研究大学院大学, 国立極地研究所)
*Toshitaka IMAKI(SOKENDAI), Nobuo KOKUBUN(SOKENDAI, NIPR), Kozue SHIOMI(Tohoku Univ.), Takahashi AKINORI(SOKENDAI, NIPR)

群れで生活する動物では、各個体が行動を調節することによって群れのまとまりが維持されていると考えられる。群れを構成する個体がいつ、どのように行動を調節するかを理解することは、群れ行動のコストや適応的意義を推定する上で重要であるが、野生下での研究はこれまで限られた種に集中していた。我々は、2017年12月に南極のオングル諸島西部のまめ島で抱卵期のアデリーペンギン(Pygoscelis adeliae)に行動記録計を取り付け、採餌場である氷縁海域までの移動を記録することによって、氷上移動中の群れの安定性と、まとまりが維持されるメカニズムについて検討した。GPS記録が得られた14個体のうち、3グループ7個体が同時に巣を離れて海へ向かい始めていたことが確認された。これらの個体は、氷縁まで39.7–41.3 kmの距離を14.8–16.7時間かけて移動しており、この間3つのグループすべてにおいて群れが継続的に維持されていた。さらに、このうち3個体に取り付けていた加速度記録から、移動中の行動を休息、歩行、トボガン(腹ばいでの移動)に分類することができた。行動分類の結果から、3個体が休息のタイミングを一致させていること、及び各移動様式(歩行、トボガン)での移動距離、及び移動速度には個体差があることが明らかとなった。また、同調的な休息を先導する個体は移動中入れ替わっており、群れ内の前後関係も変化していることから、これらの3個体はリーダーフォロワー関係を入れ替えながら移動していることが示唆された。以上の結果は、アデリーペンギンが氷縁までの移動中、移動のタイミングと様式を相互に調整しながら、継続的に群れを維持していることを示している。


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