| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-077  (Poster presentation)

三陸沿岸域におけるアカウミガメ亜成体の採餌行動と移動様式の関係性に関する研究【A】
A study on the relationship between foraging behavior and migration patterns of juvenile loggerhead turtles Caretta caretta in Sanriku coastal area【A】

*村上凌太, 阪井紀乃, 齋藤綾華, 田島寛大, 黒田健太, 佐藤克文, 坂本健太郎(東京大学)
*Ryota MURAKAMI, Kino SAKAI, Ayaka SAITO, Tomohiro TAJIMA, Kenta KURODA, Katsufumi SATO, Kentaro Q SAKAMOTO(The University of Tokyo)

海洋環境では餌を求めて広範囲を移動する成長回遊が多くの種でみられる。成長回遊において餌の多いパッチの探索は獲得資源量最大化のための重要な戦略となる。ただし、海洋では餌が3次元的に分布し、かつ時間的に変動しており、捕食者の採餌戦略に関する知見は十分でない。そこで、本研究では三陸沿岸域に生息するアカウミガメCaretta carettaの採餌行動と鉛直・水平方向の移動様式を比較し、餌分布との対応を検討した。三陸沿岸域では、夏季にアカウミガメが来遊し、主に動物性プランクトンを採餌していることが知られている。2019年から2022年にかけて定置網で混獲されたアカウミガメ6個体に深度・3軸加速度記録計、GPS、ビデオカメラを装着して野外に放流することで、各個体から3日間の遊泳記録及び12時間の映像記録を取得した。加速度と映像記録を組み合わせて摂餌行動を推定したところ、摂餌行動は早朝の潜水で多くなっていた。同様に、摂餌回数の多くなる時間帯に潜水深度が深くなっていることが確認された。加速度から算出した活動度(ODBA)をエネルギー消費量の指標として計算し、推定摂餌回数及び潜水中のODBA積算値をそれぞれ応答変数とし、潜水深度・潜水時間との関係についてGLMMによって解析したところ、最大潜水深度が深くなるほど摂餌回数が増加し、かつ消費エネルギー量も増加する傾向がみられた。また、GPS記録から推定した各個体の水平方向の最大移動速度は2.5~7.6km/hであった。アカウミガメの対水遊泳速度は約1.8km/hであることから、個体によっては記録期間中海流により受動的に水平移動していることが示唆された。一般的に餌となる動物性プランクトンが分布する深度は日中に深く、夜間に浅くなるため、アカウミガメが餌の日周鉛直移動に合わせて潜水深度を変化させ、鉛直方向のエネルギー獲得効率を最大化させている可能性が示された。また、水平方向のパッチ探索は海流を利用することで広範囲を探索していると考えられた。


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