| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-080  (Poster presentation)

ツクツクボウシの主鳴音の音響特性と形態・環境との関係【A】
Relationship between the acoustic characteristic of the calling song of Meimuna opalifera and the morphology or the environment【A】

*児玉建, 立田晴記(九州大学)
*Takeru KODAMA, Haruki TATSUTA(Kyushu Univ.)

 オスのみが鳴く生物において、鳴音の主な役割は交尾のためにメスを誘引することである。また鳴音の音響特性は、発信者の体サイズや周囲の気温などの情報を反映していると考えられる。セミもオスのみが鳴くが、その発音方法は特殊であり、腹腔内の筋肉により膜を振動させ、腹腔で響かせることで、大音量かつ特徴的な鳴音を発する。セミの鳴音は他の生物の鳴音と比べて極めて多様で、種によっては過度に複雑である。しかし、世代時間の長さ、飼育の困難性等から、セミの鳴音の役割や行動生態に関する実証研究は不足している。
 本研究ではツクツクボウシというセミに着目した。本種のオスは極めて複雑な主鳴音を発する。その主鳴音の主要部は、周波数の変化パターンから前半、後半の2パートに区別される。本種の非常に複雑な主鳴音の特性には、個体自身の情報や環境から受ける情報が反映されている可能性がある。そこで主鳴音の音響特性が、セミの体サイズや生息環境によって変化しうるか否かを調査した。
 2022年8–9月に、福岡県の九州大学伊都キャンパス構内でツクツクボウシのオスを捕獲し、屋外に設置された録音用のカゴに入れ、レコーダーで音声を記録した。同時にロガーを用いて周囲の気温を記録した。また録音に用いた個体は全て冷凍標本として保存した。再録された主鳴音の音響特性を定量化すると共に、録音個体の標本を用いて体サイズを測定した。その結果、本種では周囲の気温が低いほど主鳴音の持続時間が長くなる傾向が見られた。一方、主鳴音の平均ピーク周波数と気温、体サイズとの間に有意な関連性は見られなかった。気温によって変化する時間成分が個体間コミュニケーションに与える影響を今後調査する必要がある。


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