| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-085  (Poster presentation)

行動評価実験による変形菌自他認識関連分子の探索【A】
Evaluation of behavioral response to Search for Molecules Related to Allorecognition in Myxomycetes【A】

*増井真那(慶大・先端生命研, 慶應義塾大学), 山本フィリップ(慶大・先端生命研, 慶應義塾大学), 河野暢明(慶大・先端生命研, 慶應義塾大学)
*Mana MASUI(Inst. Adv. Biosci., Keio Univ., Keio Univ.), Phillip YAMAMOTO(Inst. Adv. Biosci., Keio Univ., Keio Univ.), Nobuaki KONO(Inst. Adv. Biosci., Keio Univ., Keio Univ.)

アメーボゾアに属する多核単細胞生物である変形菌の変形体は同種他個体と出会うと融合か回避を自他認識によって選択する行動が知られている.先行研究ではこの自他認識は細胞膜どうしの接触以外にも,分泌された粘液鞘への接触によっても起こることとされている.しかし行動決定に用いられている物質,自他認識行動の実態にはまだ十分点が多く,自他認識の機構はまだ十分に理解されていない.そこで本研究ではまず自他認識に関わる基礎的な生態行動を理解すべく,変形菌が同種や他種に対して取る行動の評価を行なった.また同時に対象生物にはPhysarum rigidum イタモジホコリと,同属のPhysarum roseum アカモジホコリを用いた.その結果,異種間の変形体2個体は相手に対しては一切無視する行動を取り,同種他個体に対するものとは大きく異なっていた.一般に節足動物は他種であっても認識はすると言われているため,変形菌の自他認識に用いられているシグナルはより特異性が高いものであることが示唆された.次に行動決定に用いられる物質の特定に向けては,成分ごとに分離した粘液鞘に対する変形体の反応の分析を行う予定である.今回は前段階として,変形体が脱ぎ捨てたことによって単離された粘液鞘である「はいあと」への反応を観察する行動試験をP. roseumを用いて行った.その結果同種内においても採取年が異なる株間で,回避,乗り上げて滞在するといったように反応に違いが見られた.


日本生態学会