| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-098  (Poster presentation)

キイロシリアゲアリにおける女王アリの人工誘導法の確立【A】
Artificial induction of queen differentiation in Crematogaster osakensis【A】

*西村七恵, 柴谷亘, 後藤彩子(甲南大学)
*Nanae NISHIMURA, Wataru SHIBATANI, Ayako GOTOH(Konan Univ.)

高度な社会性が見られるアリでは、明確な繁殖分業が成立しており、繁殖をになう女王アリと繁殖をしないワーカーが共存している。多くの種で、女王アリとワーカーは女王アリが生んだ受精卵から生まれてくるため、遺伝的にはほぼ同じであるが、どちらのカーストに分化するかはエサなどの環境要因で後天的に決まる。このような表現型可塑性を理解するためには、カーストの分化を人為的に行うことが必要である。そこで本研究では、幼若ホルモン類似体(JHA)であるメトプレンをキイロシリアゲアリ(Crematogaster osakensis)の幼虫や卵に塗布することで、女王アリへの分化を人工的に誘導する方法を確立することを目的とした。
メトプレンの塗布を行った幼虫は、世話を行うワーカーが異物と判断し、巣内から排除されて死亡した。この解決方法を検討したところ、メトプレンの塗布を行った幼虫の生存率は、メトプレンの濃度には大きな影響を受けないが、腹部の大きいワーカーに世話をさせることや、体サイズが大きい幼虫を使用することで改善した。また、メトプレンの塗布を行った幼虫の中から、女王アリへ分化した幼虫を確認できた。しかし、その確率はかなり低かったため、女王アリへの分化が起こりやすい実験条件はまだ不明である。今後は、幼虫へのメトプレンの塗布時期や、女王アリへの分化に最適なメトプレンの濃度などをさらに検討していく予定である。


日本生態学会