| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-104  (Poster presentation)

内温性形成に伴ったクロマグロ若魚の代謝速度の変化【A】
Change in metabolic rates of juvenile Pacific bluefin tuna during endothermic development【A】

*福家真帆(東大大気海洋研), 阿部貴晃(東大大気海洋研), 藤岡紘(水研機構・水産資源研), 野田琢嗣(京都大学), 北谷佳万(大阪海遊館), 入野浩之(大阪海遊館), 北川貴士(東大大気海洋研)
*Maho FUKE(AORI, Univ. of Tokyo), Takaaki ABE(AORI, Univ. of Tokyo), Ko FUJIOKA(Japan. Fish. Res. Educ. Agcy.), Takuji NODA(Kyoto Univ.), Yoshikazu KITADANI(Osaka Aquarium Kaiyukan), Hiroyuki IRINO(Osaka Aquarium Kaiyukan), Takashi KITAGAWA(AORI, Univ. of Tokyo)

 魚類は、体温が外部の熱源に依存する外温動物であり、一般的に水温よりも高い体温を示すことはない。しかし、マグロ族に代表される一部の種では、高い代謝熱と高い体躯の断熱性により、水温よりも高い体温を保持することができる(内温性)。特に、クロマグロ Thunnus orientalis は、マグロ族の中でも発達した内温性を有し、この特性によって太平洋の中〜高緯度海域に進出できたとされている。本種は、仔稚魚期には体温を保持できないが、尾叉長(FL)25 cm程度より内温性を示し始め、40 cm FL以上では、水温よりも高い体温を常に保持できるようになる。このことから、20〜40 cm FLでは、代謝熱が上昇することが予想されるが、本種の内温性発達期における代謝速度の計測例は皆無である。そこで、本研究では、体成長に伴ったクロマグロの代謝速度の変化過程を明らかにすることを目的とし、本種若魚の代謝速度を計測した。
 クロマグロ若魚(20〜30 cm FL)を、土佐湾近海で曳縄により採集し、大阪海遊館海洋生物研究所以布利センター(高知県土佐清水市)に搬入した。搬入後、一週間蓄養したのち代謝速度計測を行った。代謝速度は、水温一定(26℃)に保った閉鎖型の回流水槽内で遊泳させることで計測し、最小遊泳速度における代謝速度(mgO2・h-1)のスケーリング指数(体重と代謝速度の関係を両対数で表した時の傾き)を推定した。
 推定の結果、20〜30 cm FL(FL: 19.7~28.2 cm、 体重: 96~389 g)における代謝速度のスケーリング指数は、1.32(±0.15 S.E.) だった。マグロ族の亜成魚〜成魚(約30 cm FL以上)では、代謝速度は体重の0.5〜0.6乗に比例することが報告されていることから、本種は体温保持能力を示す40 cm FLよりも早い成長段階(20〜30 cm FL)で熱産生能力を急激に発達させることが示唆された。


日本生態学会