| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-114  (Poster presentation)

カナメモチの豊凶が同一林分内鳥散布樹木の種子散布パターンに与える影響【A】
Effects of fruit abundance of Photinia glabra on frugivorous seed dispersal of fleshy fruited tree species coexisted in a same stand【A】

*増田あすか, 平山貴美子(京都府立大学)
*Asuka MASUDA, Kimiko HIRAYAMA(Kyoto Prefectual Univ.)

 果実食鳥類の行動は、個体から景観レベルでの果実量に影響されることから、林分における液果をつける種の果実量とその分布は、果実の持ち去りパターンを変化させることが指摘されている。多くの植物では、花・種子の生産数が空間的に同調しながら大きく年変動する豊凶現象がみられ、液果をつける樹木で豊凶がみられる場合には、それが被食種子散布パターンに影響を与えることが考えられる。カナメモチは京都市近郊二次林において優占的な鳥散布樹木であり、果実生産に大きな豊凶があることが明らかになってきている。本研究ではカナメモチの果実量の豊凶がカナメモチとその周辺の鳥散布樹木の種子散布パターンにどのような影響を与えるのか明らかにすることを目的とした。
 2010年度より林分レベルに設置したシードトラップのデータでは、カナメモチの果実生産には大きな年変動が認められ、その豊作年には林分の果実量の50%以上をカナメモチが占めていた。カナメモチの果実量の増加に伴って、カナメモチばかりでなく、ソヨゴやクロバイでも被食率が増加する傾向が認められた。2013年度よりカナメモチ5個体に設置したシードトラップのデータでは、果実生産には大きな年変動が認められ、個体間で強く同調する傾向が認められた。豊作年には全個体で被食率が上昇し、被食期間は長く、種子散布距離は長くなっていた。2021年の秋よりカナメモチを中心にその周囲の鳥散布樹木(ソヨゴ、サカキ、シャシャンボ、クロバイ)に飛来した鳥類の数や行動を直接観察したところ、カナメモチの豊作年ではその結実期(12月終~1月)に多くの果実食鳥類が飛来し、周囲の鳥散布樹木での採餌も多く見られた。一方凶作年では、鳥類の飛来や採餌が非常に少なくなっていた。以上より、林分において優占的な鳥散布樹木であるカナメモチの豊凶が林分の鳥散布樹木全体の被食種子散布パターンに強く影響している可能性が示唆された。


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