| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-122  (Poster presentation)

オオニジュウヤホシテントウによる外来植物ワルナスビへの適応は進行するのか?【A】
Does the adaptation to an alien plant Solanum carolinense by Henosepilachna vigintioctomaculata proceed?【A】

*樋口眞人, 藤山直之(山形大学)
*Masato HIGUCHI, Naoyuki FUJIYAMA(Yamagata Univ.)

 近年、人間活動によって多くの生物が本来の生息地の外に運ばれ、一部の種が定着している。多くの場合、こうした外来種の侵入は在来種が一方的に不利益を被るような生物間相互作用をもたらすが、一部の在来植食性昆虫は外来植物を新たな寄主として利用することがあり、植食性昆虫の寄主幅の進化を調べる上で好適な系となっている。ワルナスビは北米原産のナス科植物であり、山形県においては1968年に初めて侵入が確認された。2003年には、在来植食性昆虫であるオオニジュウヤホシテントウ(以下、オオニジュウ)の成虫による加害が関東地方から報告されているが、本種がワルナスビ上で繁殖しているかについては不明である。
 本研究では、山形市でジャガイモを寄主としているオオニジュウ集団と、ワルナスビおよびジャガイモの葉を用いて、実験条件下で成虫の食性および幼虫の成育能力を査定することを通じて、オオニジュウがワルナスビを利用する能力を評価した。さらに、幼虫の成育形質に関する基礎的な量的遺伝学的解析を行い、今後ワルナスビへの適応が進行する可能性を検討した。
 成虫の摂食量は、ジャガイモと比較してワルナスビで有意に少なかった。幼虫の成育に関しては、両植物上での羽化率は比較的高く有意差がなかったものの、ワルナスビ上ではジャガイモ上と比較して有意に軽い蛹重と長い成育日数を示した。以上の結果から、オオニジュウはワルナスビをある程度利用できるものの、ワルナスビはジャガイモと比較してやや不適な寄主であることが強く示唆された。量的遺伝学的解析では、多くの形質について有意な家族間分散成分は検出されず、広義の遺伝率も著しく小さい値をとった。よって、自然選択が働いたとしてもワルナスビへの適応は極めて進行しにくいことが予測された。


日本生態学会