| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-140  (Poster presentation)

環境DNAによる群集と種内変異の同時観測 : 野外での生態―進化相互連環の理解に向けて【A】
eDNA for simultaneous observation of community and intraspecific variation: toward an understanding of eco-evolutionary reciprocal interplay【A】

*嶋本直紀(北海道大学), 米谷衣代(近畿大学), 内海俊介(北海道大学)
*Naoki SHIMAMOTO(Hokkaido Univ.), Kinuyo YONEYA(Kindai Univ.), Shunsuke UTSUMI(Hokkaido Univ.)

野外環境下での進化について考慮した生態系保全が新たに注目されてきている。また、種内の適応進化と、生物群集や個体群の生態的特性は同じ時間スケールで相互に影響を与え合うことが広く認識されつつある。しかし、野外におけるそのような生態と進化の相互作用の実証例は十分でない。その主たる理由として、遺伝子レベルから生態レベルまでの包括的な生物多様性観測がいまだ進んでいないことがあげられる。すなわち、種組成や個体数などの生態情報に加えて、種内の遺伝的変異の情報(特に、形質に関連する遺伝的変異)を同時にモニタリングできていないということである。そこで本研究では、この問題を解決する新たな手段として環境DNA手法に注目した。環境DNA手法は、種特異的検出から群集の網羅的解析まで急速にその活用が始まっている。この方法による生物多様性観測が実現すれば、従来の課題を克服し種内変異と生物群集・個体群を同時にモニタリングできることが期待される。しかし、環境DNAによる形質関連の遺伝子頻度の評価はまだなく、検出に関わる緒条件の検討が必要である。
ここでわれわれは、ヤナギ上の節足動物群集の系をモデルに、環境DNA手法を用いた核ゲノム中の種内変異情報の検出条件や、群集情報と種内変異情報の同時検出の可能性を明らかにすることを目的とした研究を行った。
環境DNAの検出可能性と条件について検証するため、ヤナギルリハムシを用いてヤナギ上での摂食実験を行った。ハムシの定着時間および環境DNAの残留時間を操作したヤナギ実験処理株を設定し、各処理間で環境DNA検出の検出量の比較を行った。また、野外での適用の可能性を探るため野外環境下で試験的に環境DNA調査も実施し、検出量の測定を行った。
さらに複数のプライマー・セットによるマルチプレックスPCRを行い次世代シーケンサーによる解析を実施した。その結果、群集情報と種内変異情報の観測可能性が見いだされた。


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