| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-151  (Poster presentation)

岐阜県のチャマダラセセリ生息地における両繁殖期の群落特性と産卵状況【A】
Community characteristics and spawning status during both breeding seasons in the habitat of "Pyrgus maculatus"  in Gifu Pref.【A】

*山下将司(信州大学大学院), 大窪久美子(信州大学農学部), 中村康弘(日本チョウ類保全協会), 永幡嘉之(日本チョウ類保全協会)
*Masashi YAMASHITA(Shinshu Univ.), Kumiko OKUBO(Shinshu Univ Fac. of Agri.), Yasuhiro NAKAMURA(JBCS), Yoshiyuki NAGAHATA(JBCS)

チャマダラセセリは環境省RDBで絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定されている草原性チョウ類で、幼虫の食草はバラ科のミツバツチグリなどである。本種は春から夏に繁殖を行う年2化性の生態を有し、産卵の際に植被率が低く、明るい光環境を選好する(福田 1984)。また、産卵環境の維持には草原群落への定期的な刈取り等の攪乱が必要とされる(新井ほか 2015)。
本調査地は本州中部地域に残された数少ない本種の繁殖地である。2021年の夏季に夏型の繁殖期における植生調査を行ったところ、産卵地には植被率が低く、ミツバツチグリの優占度の高い群落型が選好される傾向が示唆された(山下ほか 2022a, b)。
 本研究では春型と夏型の両繁殖期における群落特性を把握し、これらと産卵状況との関係性について明らかにすることを目的とした。春季調査は2022年に、前年の夏季に設定された全32プロットで植物社会学的植生調査と産卵調査が実施された。
 植生調査では81種の植物種の出現が確認され、その内、植物社会学における群落の指標となる標徴種はススキクラスが19種と最も多く確認され、ノイバラクラスは5種、ヨモギクラスは3種であった。産卵調査では全プロットの46.2%で、全群落型では5群落型で本種の卵または幼虫が確認された。夏季の調査結果から積算優占度を算出し、TWINSPAN解析を実施し、7群落型と7種群が認識された。また、春季の植生調査の結果も夏季と同様の群落型に各プロットを分類した。両繫殖期間の各群落型でのJaccardの共通係数を算出し、類似性は高いと判断された。両繁殖期の群落は共にススキクラスの草原性草本種の要素が強くみられたが、遷移進行を示唆するノイバラクラスの種群も確認された。産卵環境を維持するためには遷移進行を抑制する目的での植生管理が必要である。


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