| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-152  (Poster presentation)

霧ヶ峰高原における草原再生を目的とした植生管理下にある半自然草原群落の組成と構造
Composition and structure of semi-natural grassland communities under vegetation management for grassland restoration in the Kirigamine Plateau

*根岸星奈(信州大学大学院), 大窪久美子(信州大学農学部)
*Sena NEGISHI(Shinshu Univ.), Kumiko OKUBO(Shinshu Univ. Fac. of Agri.)

霧ヶ峰は本州中部を代表する半自然草原が分布しており、希少な草原性草本植物の生育地として重要である。しかし、遷移進行や外来植物の定着によって草原性草本植物の減少や絶滅が懸念されているため、多様な草原群落の組成と構造を明らかにし、これらの成立条件を把握する必要がある。そこで本研究の目的は霧ヶ峰の異なる立地・管理下にある群落の組成と構造を把握し、適正な草原再生のための手法を検討することとした。なお、本研究は霧ヶ峰自然環境保全協議会が実施する草原再生保全事業のモニタリングの一環であり、事務局の県諏訪地域振興局環境課および関係各位には大変お世話になった。この場を借りて深謝申し上げる。
調査は車山肩および強清水園地、強清水湿原の3調査地域で実施され、各々順に概ね、ニッコウザサ群落、ススキ群落、特定外来生物・オオハンゴンソウ群落が成立する。車山肩と強清水園地では遷移を抑制するための刈取り処理、後者の一部では外来種のヘラバヒメジョオン等の選択的な刈取り処理が複数年実施されてきた。一方、強清水湿原ではオオハンゴンソウの掘り取り処理が実施されてきた。本研究では植物社会学的植生調査が実施され、相対光量子束密度と土壌硬度、土壌含水率が測定された。全プロットは計39(各1㎡)個で、処理は4㎡である。
全出現種は138種で、そのうち外来種は9種だった。希少種として環境省RL種のコウリンカや県RL種のミツバベンケイソウが確認された。TWINSPAN解析では全プロットは3調査地域に大別され、11群落型を認識した。出現種は8種群に分けられた。刈取り年数が多い処理では既報(大窪 2019,2020)と同じく、調査地ごとに特異な草原性種の出現が確認されたが、同時に外来種の出現頻度が高かった。外来種の選択的処理は効果が確認されたが、根絶は難しく、新たな侵入、定着を防ぐための集中的な対策が必要である。


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