| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-177  (Poster presentation)

コナラ属シイ属6種の当年生実生における堅果サイズ依存的な萌芽再生努力【A】
Effect of acorn size on resprouting effort in the first-year seedlings for six species of Quercus and Castanopsis【A】

*真鍋昂生, 酒井暁子(横浜国大・環境情報)
*Koki MANABE, Akiko SAKAI(Yokohama Nat. Univ)

種子サイズ変異の適応的意義について、種子重と萌芽再生力の関係に着目している。本研究ではコナラ・クヌギ(落葉樹)、シラカシ・アラカシ・アカガシ・スダジイ(常緑樹)のブナ科6種について、異なる堅果重に由来する当年生実生を栽培し、展葉完了直後に地上部を除去して1か月後の再生状況を調べた。再生の有無(再生率)、切除直前の自サイズ(地上部重量・茎高さ)に戻る能力(修復率)、同時期の無損傷個体の成長に追いつく能力(回復率)の3種類の指標によって萌芽再生力を評価し、堅果サイズとの関係を調べた。

再生率、修復率及び回復率の平均値は、いずれも2種の落葉樹種がすべての常緑樹種よりも高かった。コナラ・クヌギの再生率はほぼ100%である。一方常緑樹4種の再生率は約50%~65%である。

再生した個体について、堅果サイズの有意な正の効果は、以下の種・測値にて検出された。再生率:アカガシ・スダジイ・アラカシの3種;修復率:コナラの地上部重量と茎高さ・アカガシの茎高さ;回復率:コナラの地上部重量と茎高さ。

短期的な萌芽再生力は、切除直前に地下部に保持していた資源に依存し、その資源量は堅果に含まれていた資源の総量と各器官への分配比によって決まると考えることができる。そこで展葉完了時点での資源分配比に着目すると、コナラとアカガシは、堅果サイズが大きいほど地下部重量の比率が相対的に高く、対して他の4種は堅果サイズが大きいほど地上部重量の比率が相対的に高いことがわかった。

同じ地域に分布する近縁種間において、大種子を生産する意義が異なり、損傷リスク対応を重視する種と通常成長を重視する種が混在していること、それは落葉/常緑の違いや平均的な再生力の大小では説明できないことが明らかとなった。


日本生態学会