| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-182  (Poster presentation)

異なる生育環境下における開花フェノロジーの変異:在来一年生草本ツユクサを例に【A】
Flowering phenology of native annual herb, Commelina communis, under different local environments【A】

*藤原日向, 中田和義, 勝原光希(岡山大・環境生命)
*Hinata FUJIWARA, Kazuyoshi NAKATA, Koki KATSUHARA(Okayama Univ.)

 都市化に伴う人工地の増加は,在来植物の繁殖成功に様々な影響を与えている。開花フェノロジーは,植物の繁殖成功や植物を取り巻く生物間相互作用を規定する重要な形質であるが,都市化に伴う環境変化の影響を大きく受けうることが様々な分類群で報告されている。また,都市環境下に生育する在来植物の中には,道路脇や側溝の中など,人工的・半人工的な環境を生育地とするものも多く存在する。このような種では,生育地周辺の景観的な要素だけでなく,人為的な環境改変や攪乱の影響を強く受ける特殊な局所的環境が開花フェノロジーに影響を与えることが予測される。しかし,都市中心部と都市郊外を比較する等,マクロな視点から植物の開花フェノロジーを調査した研究例が増加している一方で,都市環境が生み出す局所的環境が開花フェノロジーに与える影響について研究した例は多くない。
 本研究では,2021年と2022年の2年間,中山間地域から都市域にかけて幅広く分布する在来一年生草本ツユクサを対象に,各集団の局所的な生育環境および開花フェノロジーを調査し,調査地域間および生育環境間で開花フェノロジーの比較を行った。
 調査の結果,中山間地域と都市域の両方において,空き地や農地でツユクサの集団が確認された他,人為的な影響をより強く受けると考えられる側溝内や道路わきにおいても多数のツユクサ集団が確認された。いくつかの開花フェノロジー指標を用いた解析の結果から,中山間地域と都市域の集団間の比較からは明確な開花フェノロジーの傾向が得られなかった一方で,局所的な生育環境間の比較からは,側溝や道路わきに生育する集団において,空き地や農地の集団と比較して,開花の開始日が遅く,開花のピーク日が早い傾向があることが明らかになった。このことから,生育地周辺の景観的な要素以上に,局所的な生育環境の違いがツユクサの開花フェノロジーに強く影響する可能性が示唆された。


日本生態学会