| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-190  (Poster presentation)

キリンソウの塩ストレス下における光合成動態の変化【A】
Changes in photosynthetic dynamics under salt stress in Phedimus aizoon var. floribundus【A】

*大庭悠暉, 半場祐子(京都工芸繊維大学)
*Yuki OBA, Yuko HANBA(Kyoto Institute of Technology)

キリンソウ(Phedimus aizoon var. floribundus)は山間部から海岸に至るまで様々な環境で分布している植物である。屋上や法面の緑化に適した種であることも知られており、都市部での栽培も行われている。キリンソウの塩ストレス環境下での光合成動態を調べることは、台風などに起因する塩害に対する耐性への評価という点で重要である。キリンソウはC3型光合成とCAM型光合成の両方を行う種であると推定されており、乾燥ストレス下での光合成動態については研究されているが、塩ストレス下での光合成動態変化に関する研究は少ない。したがって、本研究はキリンソウの塩ストレス耐性評価とCAM型光合成への切り替えや制御について調査を目的として実施した。
キリンソウ苗を水道水(コントロール)、0.3% NaCl水溶液、0.6% NaCl水溶液で灌水し栽培した。2週間経過した時点でガス交換測定を暗期12時間、明期12時間の24時間継続して行い、光合成速度、気孔コンダクタンス、蒸散速度、水利用効率、ΔCO2を調査した。また、ガス交換測定終了後に葉の水ポテンシャル、pH、クロロフィル量、LMA、Na量を測定した。
 その結果、コントロール処理区において、暗期には気孔を開く時間があり、酸蓄積を行うこと、明期にはC3型光合成と判断される気孔応答と光合成動態を示すことが確認された。塩処理区では明期に気孔を開かず、酸蓄積量はNaCl濃度の増加とともに大きくなった。したがって非塩ストレス環境下でキリンソウはC3型光合成を優勢としながらCAM型光合成を併存させ、塩ストレスの存在によりCAM型光合成を増強すると考えられる。


日本生態学会