| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-192  (Poster presentation)

夜間都市照明が高木街路樹イチョウ・カエデの光合成機能と成長の季節変化に与える影響【A】
Effects of nighttime urban lighting on seasonal variation of  photosynthetic function and growth of Ginkgo and Maple trees【A】

*藤村風歌, 半場祐子(京都工芸繊維大学)
*Futa FUJIMURA, Yuko HANBA(Kyoto Institute of Technology)

夜間都市照明は光周期を変化させ、芽吹きや開花、落葉といった街路樹のフェノロジーを乱すと考えられている。これは街路樹に生理的な悪影響を生じさせ、緑陰形成や大気の浄化、季節感の提供といった重要な機能に悪影響を生じさせる恐れがある。しかし、夜間照明として急速に普及している白色LEDが秋のフェノロジーに生じさせる影響については研究例が少ない。
そこで、本研究では夜間LED照明が街路樹の光合成機能と、秋のフェノロジーに生じさせる影響を検証し、街路樹の生理的な機能維持や街路景観の向上の一助となることを目的とした。
実験方法としては、代表的な落葉街路樹であるイチョウとトウカエデを、夜間連続して白色LEDを照射し続ける処理区と、自然日長の対照区を設定した温室で6月から1月まで栽培し、条件間で比較した。白色LEDは防犯灯として実際に使用されているものを使用し、植物に照射したときの平均光強度は 2.5 µmol s-1m-2であった。
光合成機能測定として光合成速度、気孔コンダクタンスを測定し、夏から秋冬にかけての変化率を評価した。また、秋のフェノロジーの観察として、落葉の進行度の指標となる葉数の変化率や、老化開始・落葉の時期を調査した。
光合成機能については夜間LEDによる有意な変化はあまり見られなかった。光合成に必要な光強度は毎秒約100 µmol以上と大きいことから、本実験の光強度では影響を受けなかったと考えられた。しかし、トウカエデは処理区において気孔コンダクタンスが有意に減少していたため、夜間LED照明が気孔応答に何らかの影響を与えた可能性が示唆された。
秋のフェノロジーにおいては両種とも処理区において有意な老化・落葉の遅れがみられ、大幅な乱れが生じていた。
結論として、夜間LED照明はイチョウとトウカエデの秋のフェノロジーを乱し、街路樹としての機能に変化を生じさせている可能性があり、都市照明のLED化の影響評価が必要であることが示唆された。


日本生態学会