| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-198  (Poster presentation)

冠水ストレスに対するポプラの光合成・形態応答の評価【A】
Evaluation of photosynthetic and morphological responses of Populus alba to flooding stress【A】

*岡本耀介(京都工芸繊維大学), 半場祐子(京都工芸繊維大学), 馬場啓一(京都大学)
*Yousuke OKAMOTO(Kyoto Institute of Technology.), Yuko T HANBA(Kyoto Institute of Technology.), Kei'ichi BABA(Kyoto Univ.)

日本における大雨の頻度は増加する傾向があり、地球温暖化などの気候変動が影響しているといわれている。大雨に伴って植物の冠水頻度も増加する。冠水に対する植物の地下部の研究は多く行われており、冠水は土壌酸素の減少による根の呼吸阻害などを引き起こすことが知られている。しかし、植物の成長を支える重要なはたらきである光合成が、冠水によってどのような影響を受けるのかについての研究は比較的少ない。そこで本研究ではモデル樹木であるポプラを材料として、光合成機能の測定を通して植物の冠水に対する応答能力を調べることを目的とした。
人口気象器内で栽培したポプラ(Populus alba L.)を冠水ストレス処理群とコントロール群に分け、6週間実験を行った。それぞれの群について2週間ごとに実験開始時からの光合成機能の変化を評価した。Li-7000を用いて光合成速度、気孔コンダクタンスと水利用効率を算出した。またLi-7000と接続した真空ラインによって葉から出たCO2を捕集し、その炭素安定同位体比を測定することで葉肉コンダクタンスの算出をした。
光合成速度は冠水処理群、コントロール群との間で大きな違いは見られなかった。気孔コンダクタンスは冠水処理群では2週目から6週目にかけて大幅に増加したが、コントロール群では変化しなかった。葉肉コンダクタンスは冠水処理群では2週目から6週目にかけて大きく低下した。コントロール群では4週目にだけ葉肉コンダクタンスが有意に低下したが、低下の程度は冠水処理群より小さかった。
これらの結果から、ポプラは冠水を受けた際は、気孔からのCO2取り込みは活発になるが、その一方で葉肉コンダクタンスが低下するため、結果として光合成速度に変化が生じないことが明らかになった。


日本生態学会