| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-200  (Poster presentation)

冠水ストレスに対するイネの光合成応答及び葉肉コンダクタンスへの影響【A】
Photosynthetic response of rice plants to flooding stress and its effect on mesophyll conductance【A】

*安井祐大郎, 半塲祐子(京都工芸繊維大学)
*Yutaro YASUI, Yuko HANBA(Kyoto Institute of Technology)

植物が成長し生きていく上で、光合成により空気中のCO2をいかに効率良く取り込むかは重要である。しかし、乾燥や高湿など様々な環境ストレスにより、光合成機能の低下が引き起こされる。近年、洪水や干ばつなどの異常気象が増加している。特に、大雨や台風による作物の冠水は、収量の低下へとつながる。将来的にも冠水被害が増加すると予想される一方で冠水が作物の光合成に与える影響を調べた研究は未だ不十分である。本研究では、冠水を想定した環境において3品種のイネを栽培することで、冠水の光合成機能や成長、形態への影響、また冠水に対する品種間のストレス応答の差異を解明することを目的とした。
イネの苗をポットに植え込み、冠水を施さない区と植物体全体が冠水する処理区で栽培した。2021年は冠水処理を10日間に固定し、3品種全てにおいて7月から11月の成長期における各月のガス交換パラメータや葉肉コンダクタンス、LMAの測定を複数回行い、5ヵ月間の平均値を算出した。2022年は測定を行う時期を早晩性に基づき調整し、冠水害を受けやすい生殖成長期の期間を品種ごとに設定した。また、葉や茎の内部構造の形態観察を行い、空隙率と細胞間隙に接する葉緑体表面積(Sc)を計算した。
冠水処理により光合成機能が大幅に減少し、気孔の開閉調節の異常によるCO2の取り込み阻害、葉内形態変化による葉肉細胞内のCO2拡散が制限されたことが示された。また、生殖成長期の冠水応答は、イネの品種による違いが特に顕著であり、葉の解剖学的特性の変化(空隙率、Scの増加)とCO2拡散の促進(葉肉コンダクタンスの増加)とに結びついていることが確認された。また、冠水によるLMAの変化には、光合成機能の応答と同様に品種間での違いが見られ、品種の早晩性による違いが影響している可能性がある。本研究は、冠水に強いイネ品種における、冠水に順応するための生存戦略を理解する一助となる。


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