| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-201  (Poster presentation)

種の多様性と温度低減効果の関係の検討【A】
Examination of the relationship between species diversity and temperature reduction effects【A】

*田中君明, 大澤剛士(東京都立大学大学院)
*Kimiaki TANAKA, Takeshi OSAWA(Tokyo Metropolitan Univ.)

生態系における種の多様性および機能的多様性は、生態系機能および生態系サービスを高める可能性が複数の研究において示唆されている。緑地が持つ夏季の温度低減効果は、都市化が進む現代において重要な生態系サービスだが、その種多様性や機能的多様性との関係はほとんど検討されていない。人為的な影響を強く受けた都市緑地であっても、種の多様性および機能的多様性を介して生態系機能に差異が生じ、温度低減効果という生態系サービスに影響するかもしれない。そこで本研究は、都市緑地を対象に、ドローンによって撮影した可視画像および熱赤外線画像と現地調査を組み合わせ、種の多様性および機能的多様性と樹冠表面温度の関係について検討を行った。その結果、樹冠構成種の多様性と温度等の関係は検出されなかった一方で、樹冠構成種が複数の機能群を含む場合には樹冠表面温度が低くなる傾向が検出され、緑地構成樹種の機能的多様性は温度低減効果を高める可能性が示唆された。このメカニズムを検討するため、機能数と葉量を指標すると考えられるNDVI値、NDVI値と樹冠表面温度の関係を検討したところ、特に相関関係は検出されず、葉量は機能数と樹冠表面温度を介する要因ではないことが示唆された。今後は、機能数と温度低減効果の関係を説明するメカニズムを明らかにすること、また、サンプル数の増加や異なる環境下での検討のため多地域において本研究と同様のアプローチによる検討を進めていくことが望まれる。


日本生態学会