| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-206  (Poster presentation)

雑草の匂いがトウモロコシの品質を高める【A】【B】
Weed odors enhance corn quality【A】【B】

*櫻井裕介(新潟大学), 湊菜未(新潟大学), 林八寿子(新潟大学), 石崎智美(新潟大学), 𠮷田拓馬(龍谷大学), 和泉翔太(龍谷大学), 塩尻かおり(龍谷大学)
*YUSUKE SAKURAI(Niigata Univ.), Nami MINATO(Niigata Univ.), Yasuko HAYASHI(Niigata Univ.), Satomi ISHIZAKI(Niigata Univ.), Takuma YOSHIDA(Ryukoku Univ.), Shota IZUMI(Ryukoku Univ.), Kaori SHIOJIRI(Ryukoku Univ.)

人為的に被害を受けた同種や異種植物からの揮発性物質(匂い)に曝された未被害植物は、昆虫に対する抵抗性を増加させる。本研究では雑草の匂いをトウモロコシの栽培に利用する可能性を評価した。それと同時にトウモロコシの苗を雑草の匂いを暴露することで被害、成長、繁殖にどのような影響があるか、そのメカニズムを明らかにすることを試みた。
発芽後7日目のトウモロコシ苗を、ヨモギまたはセイタカアワダチソウの匂いまたは両者MIXの匂いに7日間暴露した。非暴露の苗をControlとして用いた。処理苗とControl苗を、殺虫剤を散布していない実験圃場で栽培した。その結果、3種類のADPVsのいずれかに暴露された苗は、Controlに比べて葉の被害が少なかった。また、セイタカアワダチソウまたはMIXはControlに比べてより多くの葉と分蘖を生じた。さらに、MIXに暴露した苗では、雌穂の数が増加した。また、すべての匂い暴露処理において、小穂の糖度はControlよりも高かった。さらに、MIXを曝露した苗と曝露していない苗(Control)を農薬を使用した従来の農法で栽培したところ、MIXを曝露した苗で、小穂の糖度が高くなった。分蘖数、総葉数、損傷葉数、穂数について、同様の有意差が認められた。
さらに、揮発性物質で処理された植物のメカニズムを評価するために、実験室での実験を行った。MIXに暴露したところ、アワヨトウの幼虫の成長、CMVの蓄積量が抑制されたことが観察された。この処理は苗のジャスモン酸の量に影響を与えなかったが、サリチル酸の量は曝露により増加した。ヨモギ、セイタカアワダチソウ、MIXの匂いの成分を調べたところ、MIXの匂いはヨモギとセイタカアワダチソウの匂いの中間の組成となった。これらより、雑草の匂いを暴露することでトウモロコシの品質を高めることができることが示された。


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