| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-216  (Poster presentation)

頂枝、側枝間の理論的通水コンダクタンスの階層性は次年の枝軸成長に関与する【A】
The hierarchy of theoretical hydraulic conductance between apical and lateral shoot contributes the elongation growth of shoot axes next year【A】

*横山大輝, 吉村謙一(山形大学)
*Daiki YOKOYAMA, Kenichi YOSHIMURA(Yamagata Univ.)

 枝軸の伸長成長には水が必要で、十分に水が利用できる条件では長い枝軸の形成が可能だと考えられる。枝の通水コンダクタンスは水輸送機能を示す指標であり、分枝した枝軸間でコンダクタンスに違いがあると、その枝軸間で水分輸送に優劣が生じる。一般に、分枝する際、頂枝は側枝より通水コンダクタンスが高く、頂枝・側枝間の水利用に階層性が生じる。また、側枝は頂枝より斜行し、重力に耐えるために力学特性を有していると考えられる。本研究では、頂枝と側枝間の解剖学的な通水・支持機能の違いが各枝軸由来の後続の枝成長に与える影響を解明することを目的とした。
 オオバツツジ(Rhododendron nipponicum)を対象種とし、n-1, n年に伸長した親子関係にある枝軸の長さと各枝の傾きを天頂角で測定した。また、測定した全ての親枝、子枝を頂枝もしくは側枝に分類した。結果、親枝長だけではなく、親枝の頂側関係も子枝長に影響した。また、頂枝より側枝の方が天頂角は大きかった。
 次に、枝を節間ごとに分け、各節間を切片観察し、道管径及び木部繊維のルーメン比を測定した。また、道管径を用いて各節間の理論的通水コンダクタンスを求め、枝軸は節間が直列に配置されていると仮定し枝軸基部から先端までの通水コンダクタンスを推定した。結果、頂側間に顕著な長さの違いはみられなかったが、枝の通水コンダクタンスは側枝の方が低かった。その原因解明のため節間ごとの解剖特性を比較したところ、側枝の基部側でルーメン比と道管径が小さくなっていた。ルーメン比や道管径が小さいと材密度が高まると言われており、頂枝より天頂角が大きい側枝は、曲げモーメントが高まる基部側で高材密度の木部を形成して支持特性を高めていることが分かった。その一方、側枝基部の道管径が小さくなることにより、そこが通水上ボトルネックとなり、結果として頂側間に通水コンダクタンスの差異が生じ、側枝由来の後続の枝軸成長が制限されると示唆された。


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