| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-226  (Poster presentation)

哺乳類の林道利用に影響を与える環境要因【A】
Environmental factors affecting forest road use by mammals【A】

*鈴木美緒, 斎藤昌幸(山形大学大学院)
*Mio SUZUKI, Masayuki U SAITO(Yamagata Univ.)

 森林施業に必要な林道は、しばしば哺乳類に選択的に利用されることが知られている。しかし、哺乳類による林道利用がどのような環境要因と関係しているのかは十分に明らかでない。さらに、林道の中には、森林施業後に管理がされなくなり、廃道となる林道も存在するが、そのような廃道が哺乳類にどのような影響を与えるのかは不明である。本研究では、哺乳類に利用される林道を環境要因から評価し、さらに廃道となった後も林道が哺乳類に影響を与え続けるのかを明らかにすることを目的とした。
 調査は2022年6月から11月に山形県鶴岡市で行った。人間による利用強度の異なる林道と廃道、林内に調査サイトを計106箇所用意し、カメラトラップにより各哺乳類の撮影頻度を取得した。林道利用に関係する環境要因として、各サイトで見通しの良さ、傾斜角、開空度、車両の通行頻度、周辺針葉樹林率、市街地からの距離を測定した。得られたデータより、環境要因が各哺乳類の相対撮影頻度に与える影響を解析した。
 解析の結果、林道・廃道・林内は異なる環境特性を持ち、哺乳類の撮影傾向は環境により異なっていた。林道は、見通しが良く、緩傾斜であり、廃道は、緩傾斜であるが、見通しが悪い環境であった。林内は、急傾斜であるとともに見通しが悪い環境であった。各種と環境要因の関係を解析した結果、中型食肉目は林道で撮影頻度が高い傾向にあったが、見通しが悪くなると(すなわち廃道になると)撮影頻度が急激に減少する傾向がみられた。一方、イノシシは廃道で撮影頻度が高い傾向にあった。これらの結果より、林道を利用する種にとっては見通しの良さが重要であることが示され、そのような種は林道の管理がなくなるとすぐに利用しなくなる可能性がある。ただし、種によっては人間の管理がなくなることで利用し始めることも示唆された。


日本生態学会