| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-231  (Poster presentation)

繰り返しの高強度択伐が引き起こすボルネオ熱帯降雨林の二次遷移の停滞【A】【B】【E】
Arrested secondary succession of logged-over Bornean tropical rainforests caused by repeated intense selective logging【A】【B】【E】

*竹重龍一(京大・森林生態), 青柳亮太(京大・森林生態, 京大・白眉センター), 澤田佳美(森林総研・東北), 今井伸夫(東京農大・森林), 北山兼弘(京大・森林生態)
*Ryuichi TAKESHIGE(Forest Ecology, Kyoto Univ.), Ryota AOYAGI(Forest Ecology, Kyoto Univ., Hakubi Center, Kyoto Univ.), Yoshimi SAWADA(FFPRI, Tohoku), Nobuo IMAI(Tokyo Univ. Agriculture), Kanehiro KITAYAMA(Forest Ecology, Kyoto Univ.)

 ボルネオ島の低地熱帯降雨林には、高いバイオマス密度を持った混交フタバガキ林が広がっている。優占樹種であるフタバガキは木材として選択的に伐採(択伐)され、択伐後の森林バイオマスは二次遷移に伴い数十年で回復すると報告されてきた。しかし、実際の二次林景観では、伐採後数十年が経過してもシダ・ツルが林床・林冠を覆い、バイオマスの回復が停滞した異なる植生レジームへの変化が広く観察されている。このような植生の成立要因は、これまで未解明であった。本研究では、同一景観内の局地的な伐採履歴の違いにより、順調にバイオマスが回復する森林とシダ・ツルに被覆された回復が停滞する森林とが生じていると仮説を立て、衛星画像解析を用いて検証した。
 本研究は、マレーシア・サバ州のTangkulap森林管理区を対象とした。この管理区では、1970~2002年まで繰り返し択伐が行われていたが、局地的な詳細な履歴は不明であった。そこで、1988~2019年に撮影されたLandsat衛星画像を用いて時系列解析を行い、ピクセル毎に詳細な伐採履歴を解明した。先行研究にて作製した2019年現在の3植生(シダ被覆植生、ツル被覆植生、シダ・ツル非被覆植生)の分布を示した植生図と組み合わせて解析することで、過去30年に受けた伐採履歴の違いを現在の植生毎に比較した。
 現在シダ・ツルに被覆された森林は、被覆されていない森林よりも直近の伐採が加わる前のバイオマスが低く、直近の伐採時の伐採量も大きかった。このことから、現在シダ・ツルに被覆されている森林では、1988年以前の伐採から十分に森林が回復していない状態で、強度伐採が繰り返されて成立したことが示唆された。本研究より、ボルネオの木材生産林では破壊的な択伐がシダ・ツルの繁茂を招き、レジリエンスの低下した森林が広く分布している現状が明らかになった。


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