| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-233  (Poster presentation)

三宅島2000年噴火後の土壌動物群集とリター分解の変化【A】
Changes in soil faunal communities and litter decomposition after the Miyake-jima 2000 year eruption【A】

*青山友輝(筑波大学), 上條隆志(筑波大学), 吉田智弘(東京農工大学), 金子信博(福島大学), 菅原優(筑波大学)
*Yuki AOYAMA(Tsukuba Univ.), Takashi KAMIJO(Tsukuba Univ.), Tomohiro YOSHIDA(Tokyo Univ. of Agri and Tech), Nobuhiro KANEKO(Fukushima Univ.), Yu SUGAWARA(Tsukuba Univ.)

 三宅島は2000年に大量の火山灰堆積に特徴づけられる大規模な噴火を起こし、島内に土壌の破壊とモザイク状の植生をもたらし、土壌生態系の空間的・時間的傾度に沿った回復過程が観測できる状態にある。そこで本研究では特に土壌動物群集に着目し、噴火攪乱後の土壌生態系の発達傾度に沿って、土壌動物群集がどのように回復し、土壌動物群集とリター分解の間にどのような関係があるかを検討した。
 調査地として2011年に三宅島に設置された裸地から極相林まで含む11地点の固定調査地を用いた。①植生調査、②土壌調査、③ツルグレン法による中・大型土壌動物の採集、④ハンドソーティング法によるミミズ群集の採集、⑤リターバッグ法による分解定数の算出を行なった。リターバッグは、ハチジョウススキ草原、オオバヤシャブシ林、スダジイ林の計6地点に設置し、1mmと5mmのメッシュサイズを用い、植物種はタブノキとハチジョウススキ、オオバヤシャブシの3種を使用した。土壌動物群集については2012年のデータとの比較を行った。
 噴火後12年から20年にかけて合計植被率は上昇傾向にあり、裸地であった地点はハチジョウススキ草原となった。中・大型土壌動物は、裸地から草原の地点で個体数・分類群数は増加したものの、遷移後期にかけて衰退する傾向が見られた。また、土壌窒素量の増加が個体数に対して正に影響する傾向が見られた。ミミズ群集は、合計植被率に準じてバイオマスが増加し、極相での土壌の発達が正に影響することを示唆した。リター分解は遷移途中のオオバヤシャブシが優占する植生で分解速度が顕著に高くなった。さらに中・大型土壌動物群集の多様性やミミズの量と分解速度が正の相関関係にある傾向にあった。全体として、オオバヤシャブシの優占度が高い遷移途中段階で分解速度が速く、中・大型土壌動物も豊富であり、遷移に沿った一山型の発達過程が見られた。


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