| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-235  (Poster presentation)

口永良部島火山泥流跡地における菌根菌感染源の分布と残存植生の影響【A】
Effect of remnant vegetation on the distribution of mycorrhizal fungal inocula in volcanic mudflow on Kuchinoerabu-island【A】

*石川陽(東京大学大学院), 早坂大亮(近大院•農), 山田耕平(近大院•農), 川西基博(鹿児島大学), 奈良一秀(東京大学大学院)
*Akira ISHIKAWA(The University of Tokyo), Daisuke HAYASAKA(Kindai University), Kouhei YAMADA(Kindai University), Motohiro KAWANISHI(Kagoshima University), Kazuhide NARA(The University of Tokyo)

 火山活動は主要な自然攪乱の一つであり、その規模や頻度によって陸上生態系に様々な影響を与える。特に、火山砕屑物の堆積により土壌が消失した一次遷移地は、植物の利用可能な栄養塩の不足や乾燥などの強いストレス下にある。菌根共生は、宿主植物の養水分吸収を促進することから、このような裸地への植物の定着に重要な役割をもつ。植物群によって共生する菌根菌のグループが異なることから、菌根菌の分布とその組成は、その後の植物の侵入や植生遷移に決定論的な影響を与える要因のひとつとなるだろう。本研究では、鹿児島県口永良部島の火山泥流跡地において、残存植生からの距離による、外生菌根(ECM)菌とアーバスキュラー菌根(AM)菌感染源の分布への影響を明らかにした。泥流跡地に隣接する山腹斜面を起点としたライントランセクトを2本設置し、植物の定着している地点、および微地形や堆積物の異なる任意の地点(計17地点)において土壌を採取しバイオアッセイを行った。ECM菌とAM菌の検出には、泥流跡地への侵入が見られるクロマツとススキをそれぞれ用いた。その結果、ECM菌、AM菌共に残存植生から30m付近までの土壌では菌根形成が確認できたが、それ以上離れた地点の土壌では菌根形成が確認できなかった。加えて、土壌から篩別・ 遠心法により AM菌の胞子を分離した結果、残存植生から30mを超えた地点から、土壌中の胞子数が大幅に減少したものの、すべての採取地点においてAM菌胞子が確認できた。また、植物の定着が見られた地点の土壌では、AM菌胞子数がわずかに増加していた。以上のことから、ECM菌、AM菌共に残存植生からの距離依存的に感染源が減少することが確認され、残存植生が裸地への菌根菌供給源であることが示唆された。また、AM菌胞子は、少量ながらも裸地に侵入しており、植物の定着に伴い局地的に増殖することで植生の発達を促進する可能性がある。


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