| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-254  (Poster presentation)

標高と積雪量の異なるブナ林における材の分解速度と制御要因【A】【B】
Wood decomposition rate at different elevations in beech forests【A】【B】

*白旗智紘, 上村真由子(日本大学)
*Chihiro SHIRAHATA, Mayuko JOMURA(Nihon Universtiy)

森林には樹木、枯死木、リター、土壌有機物などさまざまな有機物によって炭素が蓄積されている。有機物は微生物によって分解されることにより、蓄えていた炭素をCO2として大気中に放出する。有機物を分解する要因として環境要因、基質要因、生物要因、分解年数などが知られている。しかし、有機物の中でも材については微生物の侵入や分布が不均一で分解速度が遅いため、材の分解呼吸速度と生物要因との関係をモデル化するに至ってない。そこで本研究では、環境要因や微生物の現存量に対する材の分解呼吸速度の応答を調べることで、材の分解速度の制御要因を明らかにすることを目的とした。調査地は群馬県利根郡みなかみ町にある日本大学水上演習林の標高860mと新潟県南魚沼郡湯沢町の苗場国有林標高550m、900m、1500mの4地点である。サンプルは2×2×15㎝の大きさで40g前後のブナ材を使用し、粗さが50μmのメッシュの袋に入れて、2021年春と秋に設置した。野外測定は非積雪期間にほぼ毎月行った。設置場所からサンプルを回収し、呼吸速度、表面温度、生重を測定し、その後サンプルを元の場所に戻した。2021年秋と2022年春、夏、秋にサンプルの一部を回収し、生重と乾重を測定した。2021年秋と2022年春に回収したサンプルについては、粉砕後、DNAを抽出し、定量PCR法により菌類と細菌類のDNAコピー数の定量を行った。本研究により、分解期間や試験地が異なる多様なブナ材の呼吸速度に対する環境要因や微生物要因による影響が明らかになった。温度と空隙含水比を用いたモデルは呼吸速度のばらつきの39%を説明した。残りのばらつきについては、サンプルの回収時期を限定した場合にのみ微生物のDNAコピー数との間に正の相関が確認できた。


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