| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-274  (Poster presentation)

太平洋沿岸における岩礁潮間帯生物群集の20年間の時間的トレンド:気候変動の影響【A】
Twenty-year temporal trends in rocky intertidal communities along the Pacific coast of Japan: effects of climate change【A】

*佐藤洸紀, 石田拳, 野田隆史(北海道大学)
*Hiroki SATO, Ken ISHIDA, Takashi NODA(Hokkaido Univ.)

本研究では、北海道東部の太平洋沿岸において、過去20年間の気候変動が岩礁潮間帯生物群集に一方向的な時間変化を生じさせたのかを検証するべく、主要な4機能群(底生藻類、固着動物、植食性軟体動物、肉食性軟体動物)の非集約的特性(種ごとの被度と分布と種組成)および集約的特性(機能群アバンダンス、種多様性)を3空間スケール(岩礁、海岸、地域)でもとめ、(1)それぞれのスケールでの各機能群の非集約的特性と集約的特性の時間トレンドの有無と特徴、(2)地域スケールでの気温と水温(年平均値、7月平均値、最高日平均値、最低日平均値)の時間トレンドの有無と特徴を明らかにし、得られた結果から両者の関係性を評価した。その結果、非集約的特性では被度で8種、分布地点数で9種の上昇トレンドが、分布地点数で9種の固着動物の下降トレンドが認められ、3種の植食性軟体動物と1種の肉食性軟体動物のアバンダンスの下降トレンド、1種の植食性軟体動物の上昇トレンドが認められた。また、種組成については、種組成の類似性が時間とともに単調に低下しているものが多かった。一方、集約的特性では、機能群アバンダンスにおいて底生藻類で上昇トレンドが、植食性軟体動物と肉食性軟体動物で下降トレンドが、種多様性において固着動物と植食性軟体動物で上昇トレンドが認められたが、スケール間で明白なトレンドの違いは見られなかった。地域スケールでの気温と水温ではいずれも年平均値と7月平均値に上昇トレンドが認められた。重回帰分析の結果、年平均水温から底生藻類と固着動物の機能群アバンダンスへの有意な影響と、最高日平均気温から底生藻類の種多様性と固着動物アバンダンスへの有意な影響が検出された。以上の結果は、北海道東部の太平洋沿岸では、過去20年間の気候変動が岩礁潮間帯生物群集に一方向的な時間変化を生じさせていたことを示唆している。


日本生態学会