| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-290  (Poster presentation)

日本産アブラハヤの遺伝的集団構造と移植の実態【A】
Genetic structure and anthropogenic introduction of the minnow Rhynchocypris lagowskii in Japan.【A】

*伊東茶宥(三重大学), 河村功一(三重大学), 戸田竜哉(広島県水海技センター), 日比野友亮(北九自歴博), 小林大純(琉球大学), 田城文人(北海道大学), 金尾滋史(琵琶湖博物館)
*Sasuke ITO(Mie Univ.), Kouichi KAWAMURA(Mie Univ.), Tatsuya TODA(Hiroshima pref. Res. Inst.), Yusuke HIBINO(Kitakyushu Mus. Nat. Hum.), Hirozumi KOBAYASHI(Ryukyu Univ.), Fumihito TASHIRO(Hokkaido Univ.), Shigefumi KANAO(Lake Biwa Museum)

アブラハヤ Rhynchocypris lagowskii はコイ目コイ科の淡水魚で極東地域に広く分布し、日本においては青森県から岡山県に至る本州の中上流域に分布する。本種の遺伝的集団構造に関する知見は幾つか存在するものの、分布を網羅した報告は存在しない。こうした背景を受け、本研究では本州および北海道で網羅的なサンプリングを行い、日本集団の遺伝的集団構造の解明を試みた。2015-2022年に72水系133地点で採集した395個体についてミトコンドリアDNAのCyt-b領域(1,141bp)を解読し、得られた配列情報を基に分子系統解析とハプロタイプネットワークの構築を行った.
分子系統樹において日本集団はLineageⅠ(東北関東)、Lineage Ⅱ(北陸)、LineageⅢ(東海近畿)の3系統から成り、Lineage ⅢはSublineage ⅢA(東海近畿)、Sublineage ⅢB(伊豆山梨)の2系統から構成されていた.北海道・東北・関東・北陸地方の広い範囲でSublineage ⅢAのハプロタイプが検出され,これらは琵琶湖水系のハプロタイプと一致ないしは近縁のものであった.同様の現象はオイカワ(河村, 2015)でも確認されており、アブラハヤにおいても琵琶湖産コアユ種苗の放流に付随した大規模な非意図的導入の存在を示唆するものと言える.


日本生態学会