| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-333  (Poster presentation)

北海道奥尻島における外来食肉目動物の夏季および秋季の時空間利用【A】
Spatio-temporal niche of the introduced carnivores in summer and autumn on Okushiri Island, Hokkaido【A】

*榎本孝晃(岩手連大, 山形大学), 斎藤昌幸(山形大学)
*Takaaki ENOMOTO(UGAS Iwate Univ., Yamagata Univ.), Masayuki SAITO(Yamagata Univ.)

外来捕食性哺乳類は生態系や生物多様性に負の影響を与えることが知られており、その影響は島嶼で顕著になることが指摘されている。北海道奥尻島には現在4種の外来食肉目動物(アメリカミンク、ハクビシン、エゾタヌキ、ネコ)が人為的に移入されているが、島内における生息状況や基礎生態は明らかになっていない。本研究では奥尻島に移入された外来食肉目動物について、生息状況および時空間利用を明らかにすることを目的とした。
 2022年6月~11月にかけて奥尻島内の林道や河川沿い31箇所にセンサーカメラを設置した。各種の撮影データの時刻情報からカーネル密度推定を用いて日周活動を評価した。さらに、各種の生息地選択性を評価するため、撮影頻度を目的変数、周辺景観や河川からの距離、市街地からの距離を説明変数とする一般化線形モデルを構築した。
 カメラ日は2094となり、一日あたりの撮影頻度はタヌキが1.96、ハクビシンが0.10、ミンクとネコは0.03となった。タヌキの撮影頻度は他地域の先行研究と比較しても極めて高く、奥尻島において高密度化している可能性が示された。31カメラサイトの内、タヌキは31地点(100%)、ハクビシンは30地点(97%)、ミンクは18地点(58%)、ネコは10地点(32%)で撮影されたことから、特にタヌキとハクビシンが島内に広く定着していると考えられる。各種の日周活動はタヌキとミンクが日中もある程度活動する夜行性、ハクビシンは明確な夜行性、ネコは薄明薄暮性を示した。GLMの結果からタヌキは明確な環境選択性が見られず、ハクビシンは草地からの距離に負の影響、市街地からの距離に正の影響を受けていた。また、ミンクは河川に近いほど、ネコは市街地に近いほど撮影頻度が高くなった。本発表では、奥尻島における各種の日周活動および環境選択性について、他地域や在来地域における先行研究と比較して議論する。


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