| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-340  (Poster presentation)

都市緑地の水域におけるウシガエルの季節消長と分散【A】【B】【E】
Seasonal occurrence and dispersal of American bullfrog in ponds and wetlands in urban green space【A】【B】【E】

*市岡幸雄, 梶村恒(名古屋大学)
*Yukio ICHIOKA, Hisashi KAJIMURA(Nagoya Univ.)

ウシガエルは生態系への悪影響が懸念されている, 特定外来生物である. 本種の季節消長や分散の様式を把握することは, 在来の餌動物に対する食害やそれが引き起こす生態系の攪乱の予測, 本種の効率的な防除に有用であると考えられる. そこで2022年7月から, 名古屋市内の緑地に点在する大小さまざまな水域15箇所において, 成体の繁殖期に発せられる鳴き声の聞き取り調査を毎週行った. 立ち入り可能な水域11箇所では, 成体・幼体の生息状況も観察した. 2023年1月までの結果として, 鳴き声, すなわち繁殖は比較的大きい水域4箇所で確認された. 成体が比較的多く(合計10回の調査日)見られた水域は1箇所だけで, ここでは鳴き声に加えて産卵が確認された. また, 成体が稀れに(合計1~3回の調査日)見られた水域4箇所では鳴き声は記録されず, 残りの6箇所の水域では成体は一回も見られなかった. 一方で幼体は, 11箇所全ての水域で確認され, 9月上旬から非常に個体数が増加した. これらの水域において, 幼体の出現以前に脚の生えた幼生はみられなかった. したがってこれらの幼体は, 今回立ち入りできなかった水域のどこかで上陸した個体群が, 移入してきたものである可能性が高い. このような高い分散能力と, 小規模な水域でも生息できる幼体の適応能力は, 本種の分布拡大に寄与していると考えられる. ウシガエルでは幼体も様々な動物を捕食することが知られているため, とくに小規模な水域では, こうした移入が生態系に及ぼす急激な悪影響, とくに在来種の絶滅に注意する必要がある.


日本生態学会