| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-350  (Poster presentation)

豊岡市域における水田ビオトープ群の植物群集とその成立要因【A】
Plant communities in paddy biotopes in the Toyooka City area and their establishment factors【A】

*溝口綾乃(兵庫県立大・地域資源), 菅村定昌(コウノトリ市民研究所), 内藤和明(兵庫県立大・地域資源)
*Ayano MIZOGUCHI(RRM, Univ. of Hyogo), Sadayoshi SUGAMURA(Citizens Inst. OWS), Kazuaki NAITO(RRM, Univ. of Hyogo)

湿地面積の全国的な減少に伴い、多くの湿生植物が絶滅危惧種となっている。また、圃場整備事業が制度化された1960年代前半頃まで水田は耕作による適度な撹乱と湿地的環境に依存した多くの湿生植物の生育地として機能していた。しかし、湿地の代替として機能していた水田は除草剤の普及や乾田化、耕作放棄地の増加により、現在は、湿生植物の生育地として十分機能していない。一方で、休耕田管理を実施している場所には絶滅危惧種が多く出現し、また、ビオトープとして管理を行えば植物を含む様々な分類群に対する保全効果があることが報告されている。兵庫県豊岡市はコウノトリの野生復帰事業の中心であり、コウノトリの採餌場所として利用できる湿地環境の創出のため、耕作放棄地や休耕田を活用した水田ビオトープが多数設置されている。これらの水田ビオトープは水生動物の生息場となることが意図されているが、湿生植物の生育地としての機能も期待される。
そこで、本研究では湿生植物の生育地としての水田ビオトープの機能を明らかにすることを目的に調査を行った。豊岡市域に設置された管理方法や周辺環境が異なる水田ビオトープ24ヵ所を選定し、2022年の6月と10月に各水田ビオトープの畦畔と圃場内を踏査し、出現する維管束植物を記録した。その結果、全調査地の総出現種数は418種(畦畔360種、圃場内209種)であった。水田ビオトープ毎の出現種数は最大110種(畦畔97種、圃場内28種)、最小56種(畦畔46種、圃場内33種)であった。17ヵ所の水田ビオトープで兵庫県指定の絶滅危惧種が確認されその数は最大5種であった。種組成を元にクラスター分析を行った結果、24ヵ所の水田ビオトープは4つのグループに分けられた。


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