| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-354  (Poster presentation)

COVID-19による主観的健康度への影響を緩和する都市緑地要素【A】
Urban green space elements for the mitigation of the COVID-19 impacts on subjective health status【A】

*髙野優, 冨高まほろ, 佐々木雄大(横浜国立大学)
*Yu TAKANO, Mahoro TOMITAKA, Takehiro SASAKI(Yokohama National Univ.)

都市住民にとって、都市緑地は生態系サービスの貴重な供給源の1つである。都市人口の割合は世界的に増加し続けており、都市緑地の役割は重要視されている。2020年以来世界中でCOVID-19 が蔓延し、人々の健康は脅かされてきた。WHOによって健康とは「身体的・社会的・精神的に完全に良い状態であること」と定義されている。COVID-19は人々に咳や発熱など直接的な症状以外にも、様々な面での健康危機をもたらしている。例えば、外出の制限による身体的活動の減少(身体的)や人との関わりが減ることでの孤独感(社会的)、また感染症蔓延への不安感(精神的)などが挙げられる。都市緑地はレクリエーションや人とのコミュニケーションの場、また景観などによる癒し効果など多様な利益を提供する。また、都市緑地は学校や公園など様々なタイプがあり、健康への影響も一様ではないと考えられる。本研究では、東京23区居住者を対象にオンラインアンケート調査を行い、どのような都市緑地への訪問が COVID-19 パンデミック前後で大都市住民の主観的健康度を左右するかを明らかにした。主観的健康度はWHOが開発した全体的な健康度を測定するための指標である。先行研究から回答者の居住環境の緑地の割合や生活習慣の情報なども考慮した。交互作用を含めた解析の結果、パンデミック時において健康度に影響を与える都市緑地タイプが明らかになった。道路脇の緑地は家族や友達との密接な関係に、寺社周囲の緑地は社会的な関わりに寄与することが示された。また、地区公園に訪問する人ほど、パンデミックによって周囲からの支援を感じにくくなっていることも分かった。平常時(パンデミック前)に健康度に影響を与える都市緑地タイプと、パンデミック前後での健康度の変化に影響を与える緑地タイプは必ずしも一致しないことが明らかになった。


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