| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-364  (Poster presentation)

再導入されたミヤマシジミ個体群の多様な変動様式【A】【発表取消/Cancelled】
Diverse patterns of temporal change in reintroduced Lycaeides argyrognomon populations【A】【発表取消/Cancelled】

*秋山礼(東京大学)
*Rei AKIYAMA(Tokyo Univ.)

ミヤマシジミPlebejus agyrognomonは,草原性のシジミチョウで河川敷や農地畦畔に生息する。 幼虫はコマツナギのみを食草とする単食性で,複数のアリと共生関係を持つ。成虫は年3〜5回発生し、コマツナギの付近を飛翔しながら様々な花の蜜を利用する。近年,生息地の草原環境の消失に伴って激減し、多くの産地で絶滅が相次いだことから,環境省RDBでは絶滅危惧IB類に指定されている。本種の保全には、既存の生息地の保全と並行して絶滅した産地への再導入が必要である。
 本研究では、長野県飯島町周辺のミヤマシジミが絶滅した地域で再導入を行なった。飯島町を含めた周辺地域のミヤマシジミ個体群では、既に集団遺伝構造や個体群構造、個体数などが明らかになっている。そのため、再導入ガイドラインの要件に適合し、再導入を行うことが可能である。
再導入は、7箇所の再導入地に専用のケージを設置し、飼育によって得られた蛹1200頭を入れ、羽化させて放蝶する方法を用いた。放蝶を行なった後は、個体数推移と再導入地の環境について調査を行なった。再導入個体群の定着に影響すると予想された複数の環境要因、1. 各サイトの面積とコマツナギの株数、株高2. 蜜源植物の株数、3. 共生関係のアリの個体数、4. 周辺環境、について調査を行なった。
調査の結果、4箇所で最終世代である再導入後2世代目(孫世代)の成虫を確認し、これらを定着に成功したと定義した。それ以外の3箇所では、孫世代の成虫が複数確認されず定着に失敗したものとした。上記の環境要因はいずれも、短期的な定着に大きく影響していないことが示唆された。再導入後2世代という短い時間スケールでは、これらの環境要因以外が、定着の成否に影響している可能性がある。
今後は、さらなる環境要因についての調査や、再導入後3世代以降のモニタリングが望まれる。


日本生態学会