| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-366  (Poster presentation)

屈斜路湖におけるマリゴケの現状と水生蘚苔類の生育状況について【A】【B】
The Current Situation of Moss Balls and the Growth Condition of the Aquatic Bryophytes, in the Lake Kussharo, northern Japan【A】【B】

*諏訪沙耶香, 南佳典(玉川大学)
*Sayaka SUWA, Yoshinori MINAMI(Tamagawa Univ.)

マリゴケとは,一般的に水面近くまたは湖沼の水中に繁茂しているコケ類が水や波によって削られたり,ちぎれたりしたものが水底で回転するうちに丸や楕円になって岸辺に打ち上げられているものを指す.日本では北海道東部の屈斜路湖のマリゴケが有名であるが,近年,コケの生育地の一部である水環境の汚染,またプレジャーボートなどによる湖底環境への影響が懸念されている.弟子屈町では「弟子屈町指定天然記念物,屈斜路湖マリゴケ」という大きな標識を作製しているものの,ここ50年間に詳しい調査は行われていないのが現状である.また,屈斜路湖のマリゴケは先行研究より,屈斜路湖特有のクッチャロウカミカマゴケが構成種の一つであることがわかっている.そこで,昨年度に引き続き本研究ではマリゴケやその構成種の分布,環境測定をすることで,生育環境を保全する上での一助とすることを目的とした.調査は,湖底のコケ群落の分布を抑え,水質を測定した.また,マリゴケの分布および湖底のコケ群落を形成しているコケ植物を把握した.その結果,調査地の湖底にコケ群落が確認された.しかしコケ類の同定の結果クッチャロウカミカマゴケが含まれているマリゴケはいくつか発見されたが,クッチャロウカミカマゴケの生体は調査地のどの地点においても確認されなかった.また,時期によっては,主に陸上の植物由来のリターが滞留し,栄養塩が多い時期もあることも確認された.マリゴケの分布場所は40年前よりも減少しており,過去のマリゴケと比較し構成種の変化も認められた.マリゴケの減少は周辺環境の変化によるものと考えられるため,マリゴケが分布する地域におけるコケ類組成や周辺環境についてより詳細な調査必要である.そして,現在コケ類の飼育を行っており,今後は陸上の生物についても関連性を調べる必要がある.


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