| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-369  (Poster presentation)

根室半島の複数の希少鳥類の分布を重ね合わせた風力発電の衝突リスクマップの作製【A】
Developing a Collision Risk Map to Wind Turbines by Combining Distributions of Endangered Birds in the Nemuro Peninsula【A】

*茨田匡(東京都市大学大学院), 久保昌也(日本小形風力発電協会, ゼファー株式会社), 新井隆史(ゼファー株式会社), 北村亘(東京都市大学)
*Masashi BARADA(TokyoCityUniv. Grad School), Masaya KUBO(JapanSmallWindTurbines Assoc., Zephyr Corporation), Takafumi ARAI(Zephyr Corporation), Wataru KITAMURA(Tokyo City Univ.)

風力発電の設置台数が増加するにつれ、風力発電に鳥類が衝突する事故が問題となっており、建設時に特定の猛禽類に対して環境アセスメントが求められている。環境アセスメントの対象となっている風力発電の施設時、一般的に建設事業者は環境省が公開しているセンシティビティマップ「EADAS」を用いて建設する立地選定を行っている。しかし、そのセンシティビティマップは10㎞メッシュのサイズで希少な鳥類の衝突リスクを評価しており、鳥類の衝突リスクを評価するためにはより小さなスケールの情報が必要である。また、鳥類への衝突リスクを考慮した立地選定を行う建設事業者も10㎞メッシュでの立地選定は難しくより評価規模が小さいものを求めている。一方で、さらに再生可能エネルギーを普及させるために環境アセスメントの迅速化が求められている。そこで、本研究では短期間で簡易な調査による十分な精度の衝突リスクマップの作製を目的とした。さらに複数の希少種への衝突リスクを総合的に評価するために重ね合わせによる衝突リスクの可視化を目的とした。調査地はこれまでに鳥類の衝突が多く報告されている北海道根室市とし、対象種は絶滅危惧種のオジロワシと準絶滅危惧種のオオセグロカモメとした。走行中の車内からそれらの分布を記録するロードサイドセンサスを用いて記録した。得られた鳥類の分布データの単位面積当たりの個体数を目的変数として、説明変数を平均標高、最大傾斜角、植被率、漁港までの距離、海岸までの距離とする一般化線形モデルを用いて、衝突リスクの推定値を算出し衝突リスクマップを作成した。推定された2種の衝突リスクを同じスケールで評価するためマップの推定値の最大値を1とし、マップの推定値を指数で表す。対象2種の衝突リスクの重ね合わせを行い、総合的な衝突リスクを評価した。この結果は今後の建設計画で希少な鳥類の衝突を避ける建設計画を提案することが可能となる。


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