| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-375  (Poster presentation)

長崎南部におけるヒクイナの生息地選択【A】
Habitat selection of the Ruddy-breasted crake in southern Nagasaki【A】

*大槻恒介(長崎大学)
*Kosuke OTSUKI(Nagasaki Univ.)

ヒクイナ Porzana fuscaは、湿原や河畔、水田などの湿性草原に生息する小型の渉禽類である。湿地の喪失や集約的な農業への変化による水田環境の悪化により、1990年代に数を減らし、環境省版レッドリストで準絶滅危惧種に指定されている。一方私は、長崎県南部において、これまで生息地として見落とされてきた耕作放棄水田で、多くのヒクイナが生息・繁殖していることを確認してきた。本研究では、耕作放棄水田を利用するヒクイナがどの程度その環境に依存しているのか、どのようなときに利用するのかを知るため、GPS ロガーを用いて個体レベルでの詳細な行動追跡を実施した。
 2021年および2022年6-7月に長崎県西彼杵半島の耕作放棄水田でヒクイナ6個体にGPSロガーを装着し、1週間から10日間ほど行動を追跡した。追跡した6個体のうち5個体から追跡データを得た。推定された行動圏の平均サイズは9,487m2であり、他の小型クイナ類の行動圏サイズと同程度であった。追跡個体は基本的に昼夜問わず耕作放棄水田を中心に生活しており、特に夜間休息時は耕作放棄水田内に滞在していた。日中は、一部個体が耕作放棄水田を離れ、水田や森林を利用した。
 耕作放棄水田に生息するヒクイナは、その環境を夜間の休息場所として利用していた。また日中の採食のためにもかなりの時間を耕作放棄水田ですごしていると考えられる。ただし、個体によっては水田や森林を日中に利用したが、これは行動圏の中心である耕作放棄水田の面積が小さく食物が賄えないためかもしれない。


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