| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-393  (Poster presentation)

奥山の人間活動が食肉目の日周性と生息地選択に及ぼす影響【A】【B】【E】
The effect of human activity on the activity pattern and habitat selection of Carnivora species in a secluded mountain area【A】【B】【E】

*安井理香, 平尾聡秀(東京大学)
*Rika YASUI, Toshihide HIRAO(Tokyo Univ.)

日本では山間部における人間活動の減少によって奥山が拡大しており、野生動物と人間の生活圏が近づいてきている。これは獣害増加へと繋がる。奥山での人間活動が野生動物の日周性と生息地選択に与える影響を知ることで、人間活動を利用した野生動物管理方法の検討に貢献できる。
本調査は秩父多摩甲斐公園内、東京大学秩父演習林内の滝川流域で実施した。流域の東側は鳥獣保護区で登山道がなく、狩猟や登山での人の立ち入りが困難である。西側は狩猟が行われていて登山道もあり、東側よりも人間活動は活発である。合計64個のカメラ・トラップで2018年6月から2019年5月にかけて撮影された食肉類6種(アカギツネ、タヌキ、ツキノワグマ、テン、ニホンアナグマ、ハクビシン)および人間活動を分析対象とした。撮影期間を餌資源が多く狩猟がない季節(2018年6月から10月、2019年5月;季節①)と、餌資源が少なく狩猟がある季節(2018年11月から2019年4月、狩猟期は11月から2月;季節②)に分けた。人間活動が食肉類の日周性に影響を与えるかをみるために、活動時間の重なりの指標となるDhatをそれぞれの動物種と人間の間で算出し、季節および東西をランダムに振り分けたデータとの有意差を調べた。
同じ季節のエリア間の活動の重なりをみると、テンの日周性のみが東西で違いがみられ、西の方の重なりが大きかった。エリアごとの季節間の活動の重なりは、タヌキ、テン、ニホンアナグマ、ハクビシンで違いがみられ、季節①の方が季節②よりも重なりが大きかった。これらの種は人間に比べると体サイズが小さく、人間による狩猟の有無に反応したことが示唆される。対して、アカギツネとツキノワグマは人間の日周性との重なりの違いが確認されなかった。前者は、生態系の上位捕食者に近い(ネズミやウサギ等を捕食する)ため、後者は生態系における上位捕食者であるためと考察できる。生息地選択ついてはポスターにて議論を行う。


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