| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-003  (Poster presentation)

北海道南部より確認されたサワガニとその個体群について【B】【E】
Reports of the freshwater crab Geothelphusa dehaani (White, 1847) (Decapoda: Brachyura: Potamidae) and its population from southern Hokkaido, Japan【B】【E】

杉目良平(ECOTECH), *奥崎穣(東京大学), 古瀬克己(札幌市), 岸田治(北海道大学), 成瀬貫(琉球大学)
Ryohei SUGIME(ECOTECH), *Yutaka OKUZAKI(Tokyo Univ.), Katsumi FURUSE(Sapporo), Osamu KISHIDA(Hokkaido Univ.), Tohru NARUSE(Univ. Ryukyus)

サワガニ属(56種)は台湾,琉球列島,九州から本州,ならびにその周辺島に分布する淡水もしくは半陸生のカニ類である.九州以北からは4種が記載されており,そのうちの1種,サワガニは吐噶喇列島から青森県まで分布する.このサワガニの分布北限は東アジアの淡水ガニの分布北限に相当する.北海道ではサワガニ属の採集記録はなかったが,2018年,我々の調査によりサワガニ属が北海道の渡島半島を流れる小河川で採集された.主に頭胸甲とオス交尾器の形態的特徴から,それらはサワガニと同定された.2018年,2020年,2022年の調査では,腹部に幼体を抱えた成熟メスと多くの未成熟個体が採集されたことから,サワガニはこの河川で個体群を維持していると推測される.サワガニはサワガニ属の中で最も幅広い緯度勾配上に分布しており,今回の発見は本種が潜在的により寒冷な地域にも生息可能であることを示すものとなった.


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