| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-011  (Poster presentation)

ベレンティのEulemur属キツネザル雑種個体群の毛色変異【B】【E】
Coat color variations of a Eulemur hybrid population in Berenty, Madagascar【B】【E】

*田中美希子, 田中洋之, 平井啓久(京都大学)
*Mikiko TANAKA, Hiroyuki TANAKA, Hirohisa HIRAI(Kyoto Univ.)

動物の種の認識、配偶者選択に体色が深く関わっていることが、魚類などで知られている。哺乳類の毛色は種の認識や配偶者選択にどのように関わっているのだろうか。マダガスカルに生息するEulemur属のキツネザルは、ほとんどの種に性的二型がみられ、オスの顔の毛色が特徴的である。本研究ではベレンティ保護区に導入された毛色と染色体数が異なる2種、アカビタイキツネザル(Eulemur rufifrons, 2n=60)およびアカエリキツネザル(Eulemur collaris, 2n=52)を起源とする雑種個体群の顔の毛色変異を分析した。今回は、顔の毛色の表現型をスコア化して評価することを試みた。E. rufifronsに特徴的な表現型を0、E. collarisに特徴的な表現型を1、中間の表現型を0.5とし、オス4形質、メス3形質について顔写真をもとにスコア化した。両種および雑種個体群の各個体をそれぞれの形質のスコア、およびスコアの合計で評価した。起源となった2種では、E. rufifronsのオス1個体でのみ1形質でスコアが両種の中間的な表現型を示す0.5であったが、その他の個体はそれぞれの種に特徴的な表現型スコアであった。雑種個体群でのスコアは、オスの4形質で0または0.5、メスの3形質で0、0.5または1であった。雑種個体群のスコアの合計ではオスでは0〜0.5(合計の範囲は0〜4)とE. rufifronsに近い表現型が多く、メスでは0〜2.5(合計の範囲は0〜3)と、中間の表現型がオスより多く見られたが、E. rufifronsに近い表現型の個体が多かった。これまでに行った遺伝分析の結果から、様々な雑種度の個体が存在すること、遺伝的にE. rufifronsに近い個体が多いことが明らかになっており、今回のスコア化による顔の毛色変異の結果もこれを支持するものであった。顔の毛色スコアと染色体数、およびミトコンドリアDNA D-loopとの関係についても報告する。


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