| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-012  (Poster presentation)

農業水路の底生動物群集に二枚貝と物理的環境条件が与える影響の評価
Effects of freshwater bivalves and physical conditions on invertebrates in an artificial ditch

*中野光議, 福元栞(南九州大学)
*Mitsunori NAKANO, Shiori FUKUMOTO(Minami Kyushu Univ.)

淡水性二枚貝類は河川と湖沼において、貝殻の堆積による底生無脊椎動物の生息環境の創造、濾過摂食による水質浄化と水生植物の生長促進、糞・偽糞の排泄による付着藻類の増加等の生態学的機能を果たしている。農業水路には二枚貝が高密度で生息していることがあり、そのような水路では二枚貝が河川や湖沼と同様の機能を果たす可能性があるが、この可能性を追求した研究例はほとんど見当たらない。本研究は、宮崎県の水田地帯を流れる三面コンクリート排水路において、二枚貝が底生動物に与える影響を明らかにすることを目的に行った。1本の農業水路に0.2m×0.2mのコドラートを60個設置し、各コドラートで底質、水深、流速、二枚貝各種の個体数と表面積、底生動物の分類群ごとの個体数を調べた。そして、底生動物(分類群数、もしくは全種の合計個体数)を目的変数とし、物理学的環境条件(水深、流速、砂泥の割合)と二枚貝(種ごとの貝殻の表面積、もしくは生貝の個体数)を説明変数とする、合計4種類の一般化線形モデルを構築した。調査の結果、二枚貝はマツカサガイとシジミ属が採取された。底生動物は、貧毛綱とヒル亜綱、およびカゲロウ目等の15目が採取され、合計17分類群708個体であった。底生動物の分類群数のモデルではシジミ類の生貝数のみが有意な効果を示し、この効果は負であった。底生動物の合計個体数のモデルでは、砂泥の割合とマツカサガイの生貝数、および同種の殻の表面積が有意な正の効果を示し、シジミ類の生貝数が有意な負の効果を示した。これらの結果から水路において、マツカサガイの貝殻の堆積と生貝の活動による機能が底生動物の個体数の増加をもたらしている可能性が示された。またシジミ類については、生貝の活動が底生動物の分類群数と個体数の減少をもたらしている可能性が示された。


日本生態学会