| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-016  (Poster presentation)

1960年代以降の大阪府域淡水魚類相の変遷に見る都市域水系における在来生物の減少【B】
Deterioration of endogenous species in urbanized aquatic ecosystem elucidated by aggregated data of freashwater fish fauna in Osaka since 1960s【B】

*原口岳, 山本義彦, 相子伸之, 上原一彦, 平松和也(大阪環農水研・多様性)
*Takashi F HARAGUCHI, Yoshihiko YAMAMOTO, Nobuyuki AIKO, Kazuhiko UEHARA, Kazuya HIRAMATSU(RIEAFO, Biodiv)

都市部への産業及び人口の集中を背景として、都市に残された緑地や生態系は種々の特徴を示す。その一つとして様々な外来生物の侵入・定着・まん延が挙げられる。結果として都市の生物多様性が一様化され、地域固有の生物多様性を喪失することは種や遺伝的多様性の保全における課題であるのみならず、数多くの住民にとっての身近な自然を巡る体験の変質や、地域の伝統文化の途絶をもたらす原因となる。大阪市ならびに周辺地域は、植被率の低さ、緑地の内訳に占める公園の優占といった土地利用に顕れた生物多様性を巡る課題及び、様々な外来生物の定着など、生物多様性モニタリングを通じて明らかになる課題の両面において、典型的な都市の生態系を有している。特に、大阪市域にあって生物多様性ホットスポットのひとつである淀川は、イタセンパラに象徴される在来魚種・地域固有魚類を涵養する生態系である。都市の生態系を巡る課題解決に向けた活動の一環として、魚類群集のモニタリングを通じて外来生物の侵入状況を継続的に把握し、生態系や在来生物の保全に反映していくことが求められる。しかし、様々な目的のもとで実施された淀川の魚類調査は充分に整理されておらず、メタ解析に耐えうる状況にはない。
発表者らが所属する大阪府立環境農林水産総合研究所生物多様性センターは、大阪府域の様々な生物、とりわけ魚類の調査を担ってきたことから、過去の魚類相に関わる定量的情報を蓄積している。そこで今年度、過去の個別調査の情報を体系的に整理し、GBIFが策定したデータ規格であるDarwin Coreに準拠させる取組に着手した。現時点で、1960年以降の淀川魚類調査の在不在またはアバンダンスならびに調査手法・詳細な調査地点の情報が利用可能な状態にある。発表では1970年代から2000年代に掛けてのブルーギルやオオクチバスの増加や分布の拡がりを例にとり、在来魚類相との関わりの解析を試行した結果を報告する。


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