| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-021  (Poster presentation)

耕作時期の異なる水田におけるプランクトン群集の比較
Comparisons of plankton communities among paddy fields under different cultivation timings

勝川凌成, 石井秀征, 重野瑞季, 倉橋智也, 小林准也, *永野真理子(京都先端科学大学)
Ryouto KATSUKAWA, Hideyuki ISHII, Mizuki SHIGENO, Tomoya KURAHASHI, Jyunya KOBAYASHI, *Mariko NAGANO(KUAS)

水田水域生態系は、人為的にかく乱される環境でありながら、さまざまな生物の生息場所、避難場所や採餌場所となっている。近年水田のある里山は、生物多様性としての価値が新たに見出されることによって、それを利用する大型生物の鳥類や魚類の分布の知見が蓄積されつつある。本研究では、水田水域生態系を支えるプランクトンに着目し、湛水初期から、その多様性と群集成立過程について明らかにすることを目的とした。調査は、京都府亀岡市における曽我谷川流域の水田5面(上流部:大学圃場4面、下流部:亀岡駅北1面)を対象とした。サンプリングは、週に2回の間隔で、湛水期間中に田面表層水を3L採水した。サンプルは、プランクトン観察用と環境DNA分析用にわけて分析した。その結果、動植物プランクトンの種数がもっとも多く確認できたのは、どの水田も7月中旬の中干し直前の時期だった。調査した5つの水田は曽我谷川の水を利用しているが、異なるプランクトン群集組成をもつことがわかった。これは、水田所有者の管理方法や、水稲の種類の違いによる水管理の仕方によるものと考えられたが、同じ運用がなされている隣接した水田間においても、その群集は異なることが明らかとなった。水田ごとに異なるプランクトン群集は、それを利用する生物の多様性につながっているかもしれない。本研究は1シーズンのみの結果であるため、今後継続的な調査を行うことによって、水田水域生態系の総合的な生物多様性を明らかにしたい。


日本生態学会