| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-035  (Poster presentation)

捕食回避に効果的なツチガエル皮膚分泌物の揮発性成分同定および同属種との比較
Identification of volatile components in the skin secretion of the Glandirana rugosa effective for avoiding predation and comparison with congener

*吉村友里, 東房健一, 清水邦義(九州大学)
*Yuri YOSHIMURA, Kenichi TOUBOU, Kuniyoshi SHIMIZU(Kyushu University)

 ツチガエルGlandirana rugosaは捕まえると特有のニオイのするカエルであり、ニオイは体表から出る皮膚分泌物に由来する。この分泌物はカエルを好んで食べるシマヘビに対して、口内に不快感を与えることで捕食回避効果があることがわかっている。ヘビは本種に咬みついた際の不快感とニオイを関連付けて学習し、次の遭遇時にニオイだけで本種を避けるようになる。したがって、本種のニオイは捕食者に対する警告シグナル(警告臭)として働くことが示唆されている。
 我々はこれまでも本種のニオイ分析を実施してきたが、マススペクトルのデータベースとの一致率による成分の推定までであった。今回は、分析条件の改善を測った上で、推定された成分の標準品を入手して正確な成分同定を試みた。さらに、同じアカガエル科ツチガエル属として2022年に新種記載されたムカシツチガエルGlandirana reliquiaと佐渡島の固有種であるサドガエルGlandirana susurraも分析し、定性的に比較した。
 成分の抽出は固相マイクロ抽出(SPME)法を用いた。カエルの体表をピンセットで刺激した後、石英ウールで分泌物を拭き取り、それを専用のガラス瓶に封入し、瓶内に揮発した成分をSPMEファイバーに吸着させた。吸着した成分をHP-INNOWaxカラムを装着したガスクロマトグラフィー質量分析計(GC/MS)で測定し、得られたマススペクトルデータをデータベース (NIST 17)と照合した。データベースとの一致率が高かった候補成分のうち、標準品を入手できた成分を同条件で測定し、スペクトルと保持時間の情報から成分同定を行った。
 結果、福岡県産のツチガエル全個体(n=6)から検出された11成分のうち9成分を同定した。ムカシツチガエルの成分は本種と一致し、サドガエルは全体的にピーク強度が小さく、確認できない成分も見られたものの7成分が一致した。一致した主要成分の1つであるHexanaはヤドクガエル科の一種のニオイ成分としても報告があり、本属以外の他種との共通成分も複数確認できた。


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