| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-042  (Poster presentation)

人を怖れない都会の鳥:東京に定着した複数種のリスク回避行動
Risk-taking behavior in urban populations of several bird species

*濱尾章二(国立科学博物館・動物)
*Shoji HAMAO(Natl. Mus. Nat. Sci., Tokyo)

都市は野生生物にとって本来の生息場所とは大きく異なった環境であり、生態、生活史、生理、行動に都市特有の選択圧がかかると考えられる。例えば、都市では新たな食物や巣場所、出会ったことのない捕食者に適応(順応)した個体のみが生活することが可能だろう。本研究では、人が多い都市において鳥類のリスク回避行動が緩和されるという現象に注目する。鳥類のリスク回避の程度は、観察者が近づいて行き鳥が逃げ始めた距離(Flight initiation distance: FID)で計ることが多い。先行研究では、都市で田舎よりもFIDが短い(リスクを回避しない傾向を持つ)とするものが多い。しかし、逆の傾向や両者の間で違いを認めなかったケースもある。そこで東京に棲む鳥類のリスク回避行動を調べるために、都心とそこから約60 km離れた茨城県の農村部で、鳥類のFIDを比較した。調査したシジュウカラ、ヒヨドリ、ハシブトガラス、スズメ、ムクドリ、キジバトの6種いずれもでFIDは都市の方が田舎よりも短く、都市で人接近のリスクを回避しない傾向があった。欧米の研究と比べると、本研究の結果は都市と田舎の差(効果量)が大きく、東京では人の影響が大きいことが示唆された。また、比較的最近(1950~70年代)東京に進入・定着した鳥種でも都市と田舎の差は大きく、都市でリスクを回避しないようになる変化は比較的短い期間で起こることがうかがわれた。FIDは人に対するリスク回避行動を計るものであるので、今後は人以外に対しても行動全般において大胆さ-臆病さが都市で変化しているか、捕食性動物に対する反応などから明らかにすることが課題である。


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